
VW(フォルクスワーゲン)といえばゴルフのイメージが強いが、今は全幅が1,800mmに達して往年のコンパクトな印象は薄れた。
そのためか以前は少しハズレた感じのあったパサートとの距離感が近づいたように思える。
そして2015年7月、パサートがフルモデルチェンジを受けて8代目に進化した。プラットフォームはゴルフと同じMQBと呼ばれるタイプ。エンジンは直列4気筒1.4リッターのターボで、ゴルフハイラインと基本的には同じだ。ますます距離が縮まった。
驚くのはJC08モード燃費で、セダン、ワゴンのヴァリアントともに「20.4km/L」に達する。ゴルフハイラインの「19.9km/L」を追い抜いた。車両重量はLサイズのパサートが220~270kgも重いため、パサートの1.4リッターターボは相当に効率が良い。気筒休止の機能などを進化させ、充電制御など細かな低燃費技術を積み重ねた。
ボディは前述のとおりセダンとヴァリアントがあり、グレードは両方にTSIトレンドライン/コンフォートライン/ハイライン/Rラインを用意。エンジンはチューニングまで含めて全車共通だが、内装や装備が異なる。
今回はボディサイズがほぼ同じになるマツダアテンザと比べてみよう。
アテンザはミドルサイズカーで、パサートと同様にセダンとワゴンを設定。欧州などの海外市場をターゲットに開発されたスポーティな内外装と運転感覚、クリーンディーゼルターボの搭載などで人気を高めている。
パサート vs アテンザ/エクステリア比較
パサートのボディサイズは、セダンで見ると全長が4,785mmで全幅は1,830mm。ヴァリアントは全長が10mm短い4,775mmで、全幅の数値は同じだ。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は両ボディとも2,790mmになる。
対するアテンザは、セダンで見ると全長が4,865mmで全幅は1,840mm。ワゴンは全長が4,805mmと短く、全幅はセダンと同じだ。
アテンザの場合、セダンとワゴンではホイールベースが異なる。セダンは2,830mm、ワゴンは2,750mmだから80mm短い。アテンザの場合、中国市場の好みも視野に入れ、セダンは外観を伸びやかに仕上げた。ワゴンは荷室を長く確保するため、ホイールベースを短く抑えてリア側のオーバーハング(ボディの後部が後輪よりも後ろ側に張り出した部分)を伸ばし、荷室容量を広げた。
パサートとアテンザのボディサイズを比較するとワゴンはかなり近い。セダンはアテンザがひとまわり大きい。
外観のデザインは両車とも各ブランドの持ち味を明確に反映させた。パサートのフロントマスクは薄型の水平基調で、少し角張ったシャープなイメージながらシンプルな印象だ。ボディサイドも同様。ボディの前後を貫通するキャラクターラインを上下に通し、シンプルな面を美しく見せている。
対するアテンザは、フロントグリルの大きな迫力のある顔つきに仕上げた。ボディサイドには波打つようなラインが入ってダイナミックな印象だ。
パサートはリアウィンドウを大きく寝かせたものの落ち着いた雰囲気で、アテンザはスポーツ指向が強い。側方や後方の視界は、両車ともに良好とはいい難い。特にアテンザはサイドウィンドウの下端を後ろに向けて大きく持ち上げたから、斜め後方の視界が遮られやすい。
最小回転半径は、パサートは全車にわたり5.4m。アテンザはワゴンが5.5mでホイールベースの長いセダンは5.6mだ。

パサート vs アテンザ/インテリア比較
パサートの内装は、ゴルフなどほかのVWと共通に水平基調かつシンプルに仕上げた。
インパネなどは、特に上質に見せようという意図は感じないが、各部を緻密に造り込んだ。エアコンの操作パネルが収まる中央部分はシルバーに仕上げて見栄えが良い。控え目かつ上質な表現に特徴がある。
デザインがシンプルなので操作性は良く、メーターなどの視認性を含めて機能的に仕上げた。
アテンザのインパネはパサートと対称的だ。メーターは3連タイプで、中央にはサイズが大きめな速度計が備わる。シフトレバーが収まる左右席の中央部分は位置が少し高く、後輪駆動車のような造りだ。
ドライバーが車両との一体感を得やすいようにデザインされ、BMW風の引き締まり感を持たせた。
なのでパサートのインテリアはリラックス、アテンザはスポーティといえるだろう。
パサート vs アテンザ/フロント・リアシート比較
前席の座り心地は両車とも満足できる。パサートは体が座面に適度に沈んで快適だ。サポート性にも不満はない。
アテンザは座面の沈み方は大きくないがボリューム不足も感じない。そしてサイドサポートが良く利いて、体をしっかりとホールドする。
この違いも車両の性格を反映させたもの。パサートの前席はリラックス感覚、アテンザはスポーティモデル。頭上の空間などは両車とも十分に確保されて快適だ。
後席の広さについては、身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は、パサートが握りコブシ2つ半になる。Lサイズの中でも特に広く、床と座面の間隔も十分に確保した。
アテンザは同じ測り方をして、セダンはパサートと同様に握りコブシ2つ半。ワゴンはホイールベースが少し短く、握りコブシ2つ分だ。着座位置はパサートに比べると少し低い印象で、やや膝が持ち上がる。なので後席の快適性はパサートが勝るが、アテンザも大人4名の快適な乗車を妨げない。
パサート vs アテンザ/動力性能比較
パサートが搭載するエンジンは直列4気筒1.4リッターのターボのみ。最高出力は150馬力(5000~6000回転)、最大トルクは25.5kg-m(1500~3500回転)だ。
車両重量はセダンでも1460kgだから余裕のある性能とはいえないが、実用回転域の駆動力を高めたから運転しやすい。ATは7速DSGだから、活発に加速したい時は高回転域を維持できる。吹け上がりも含めて満足できるエンジンに仕上げた。
一方、アテンザはガソリンエンジンが直列4気筒の2リッターと2.5リッターで、人気の高い2.2リッターのクリーンディーゼルターボも用意。2リッターはスポーティ指向のセダン&ワゴンとして物足りないが、2.5リッターはちょうど良い。
動力性能はパサートと同程度だが、ターボを装着しない排気量の大きなエンジンとあって、低回転域からの吹け上がりなどはアテンザが自然な印象でバランスの良いエンジンに仕上げられている。
ただし、アテンザのセールスポイントになるのはクリーンディーゼルターボだろう。2000回転で4リッターのガソリンエンジンに匹敵する最大トルクを発揮するから、力強い独特の運転感覚を楽しめる。
エンジンと動力性能は、豊富な選択肢を含めてアテンザが魅力的だ。

パサート vs アテンザ/走行安定性比較
パサートは現行型でプラットフォームを刷新。ボディ剛性、サスペンションやステアリングの取り付け剛性を高めた。
そのために走行安定性が大幅に進化したが、操舵感はあえて少し緩い設定に抑えた。なので内外装と同様、リラックスできる雰囲気を感じる。
峠道で機敏に曲がる性格ではないが、後輪を含めて接地性が高く、特に直進安定性が優れているのでドライバーは安心できる。
アテンザは今日のマツダ車に共通する味付けだ。Lサイズモデルだが小さな舵角から正確に反応し、欧州車でいえばBMWに似たところがある。
カーブでは、後輪の接地性と走行安定性を損なわない範囲で良く曲がり、適度に機敏な切れの良い運転感覚が特徴だ。
パサート vs アテンザ/乗り心地比較
先代パサートは路上のデコボコを伝えやすい面があり、少し粗さを感じた。Lサイズモデルを選ぶメリットがいまひとつ弱いと思えたが、新型はプラットフォームの刷新もあってかなり快適だ。大きめの段差を乗り越えた時のショックも巧みに抑えられ、フラットな印象に仕上げた。
乗り心地は新型パサートの大切な魅力になっている。17インチタイヤ装着車は、乗り心地と走行安定性のバランスが最も優れている。
アテンザは発売後に足まわりを改善して乗り心地を向上させた。特に17インチタイヤ装着車が快適だ。セダンは細かなデコボコから大きめの段差まで吸収性が優れている。19インチタイヤは機敏で走行安定性も良いが少し硬い。アテンザで乗り心地が最も快適なのは17インチを履いたセダンになる。
両車の乗り心地を17インチタイヤ装着車同士で比較すると、パサートが少し快適だ。
パサート vs アテンザ/安全・快適装備比較
パサートの安全装備は充実している。センサーはミリ波レーダーとカメラを併用。車両だけでなく歩行者も認識する。
レーダーセンサーはボディの後方にも装着され、ドライバーの死角に入る斜め後ろの並走車両も知らせてくれる。後退しながら車庫から出る時などの安全も確保した。
これらはすべて全グレードに標準装備。アテンザも標準、オプションの差はあるが、ほぼ同等の安全装備を装着できる。ただしカメラは路上の白線を読み取って車線逸脱の警報を行うにとどまり、歩行者を見分ける機能はない。
パサート vs アテンザ/燃費比較
パサートの1.4リッターターボは、JC08モード燃費がセダン/ヴァリアントともに「20.4km/L」に達する。エコカー減税も自動車取得税が80%、同重量税が75%の減税となった。
アテンザで同等の動力性能を発揮する2.5リッターのガソリンエンジンは、JC08モード燃費がセダン、ワゴンともに「16km/L」。パサートに比べて数値が見劣りする。
エコカー減税は40/25%の減税だ。ガソリンエンジンの燃費性能と減税対応はパサートが勝る。
ただしアテンザでは、前述のように2.2リッターのクリーンディーゼルターボが人気。高い動力性能を発揮しながら、6速ATのJC08モード燃費はセダンが「20km/L」、ワゴンも「19.6km/L」と優れる。
エコカー減税は免税で、申請すれば12万円の補助金も交付される(2015年8月現在)。
パサート vs アテンザ/価格比較
パサートの買い得グレードはTSIコンフォートライン。前述の安全装備に加えて運転席の電動調節機能、17インチのアルミホイールなども備わり、価格はセダンが359万円、ヴァリアントが378万9900円だ。
アテンザの価格はセダン、ワゴンともに同額。2.5リッターで充実装備の25S・Lパッケージが333万1800円。ディーゼルのXDプロアクティブが317万5200円、XD・Lパッケージは374万2200円だ。
機能と価格のバランスを競えばアテンザが割安だが、パサートも装備の違いを補正して、アテンザのクリーンディーゼルターボと同程度に収まる。
日本車とドイツ車ではあるが、ライバル関係が成り立つ。
パサート vs アテンザ/総評~どっちが買い!?
両車とも、さまざまな機能の持ち味が統一されている。
パサートは内外装のデザインから、居住空間の造り、走行性能、乗り心地まで、一貫してリラックスできる仕上がりだ。対するアテンザはすべてをスポーティに仕上げた。峠道などで「これは楽しい!」と思えるのはアテンザになる。
クリーンディーゼルターボの運転感覚も、クルマ好きにとっては魅力的な要素だろう。特に日本国内で「ディーゼル+4WD+6速MT」の組み合わせを選ぼうとすれば、セダンとワゴンならアテンザで決まりだ。
なので指向性が異なり優劣は付けられないが、幅広いユーザーが購入することを前提にすればパサートを推奨したい。
安全装備が充実していて、Lサイズモデルらしく長距離移動も快適。アテンザのようなスポーティ感覚はないが、多くの人達が「良いクルマ」と実感できるからだ。この2車種の乗り比べて結論を出すのも良いだろう。
VWとマツダのコンセプトの違い、統一の取れたクルマ造りの妙技も分かって興味深い。
























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