
以前は、軽自動車と小型車ではユーザーのニーズが全く異なるとされていた。
軽自動車は税金と価格の安さ、小さなボディによる運転のしやすさがメリットで、文字通り「軽便な移動手段」に位置づけられていた。今以上に複数の車両を所有する世帯を中心に使われる傾向が強く、居住性、質感、走行性能、乗り心地などは小型車に比べて我慢を強いられた。従って小型車から軽自動車への代替えは少ないといわれていた。
ところが、1998年に軽自動車の規格が改訂されてボディサイズが現行型と同じ大きさになると、売れ行きが増え始めた。
ライバル車同士の競争も激しく、モデルチェンジの度に商品力が高まる。近年では2011年の末にN-BOXが発売されてスズキとダイハツの競争にホンダが加わり、2013年には日産がデイズで本格参入した。
商品力の向上に伴い、小型車から軽自動車に代替えするユーザーが急増した。
2016年11月9日に発売されたトヨタルーミー&タンク/ダイハツトール/スバルジャスティの4姉妹車は、スズキハスラーが発売されて軽自動車の販売比率が新車販売総数の40%を超える事態になった2014年に企画されている。
ねらいは、軽自動車に代替えしようとするユーザーをコンパクトカーにとどめることだ。小型&普通車が中心のトヨタは、おそらく焦りを感じていたと思う。しかもトヨタは既にパッソ/ヴィッツ/アクア/ポルテ&スペイドをそろえていたため、新型車には既存の車種とは違う特徴を持たせたい。
開発と製造をダイハツが受け持つこともあり、同社が手掛けるブーン&パッソのプラットフォームとエンジンを使って、全長と全幅は同車に近く、天井だけが極端に高いトールを開発し、さらにOEM車としてルーミー&タンク/ジャスティを開発した。その結果、内外装から居住空間まで、ルーミー4姉妹車はスズキソリオも意識しながら開発することになった。
ここでは、外観や機能が似ているルーミー/タンク/トール/ジャスティとソリオを比べてみたい。
外観デザイン・取り回し比較/ルーミー・タンク・トール・ジャスティ vs ソリオ
両車ともに全長と全幅を小さく抑えて全高が1,700mmを上まわり、後席側のドアはスライド式だから、外観も良く似ている。
ルーミー4姉妹車のフロントマスクは、グリルの大きなルーミーと、シンプルで少しスポーティーなタンクの形状を姉妹車同士で使いまわしている。全長は両車ともほぼ等しいが、全幅はソリオが45mm狭い。
最小回転半径はルーミー4姉妹車が4.6m(14インチタイヤ装着車)、ソリオは4.8mで少し大回りだが、全幅の違いで取りまわし性はソリオが少し優れている。サイドウインドーの下端は両車とも低めに設定され、水平基調のボディスタイルだから視界は同等になる。
勝者:ソリオ
内装・インテリア比較/ルーミー・タンク・トール・ジャスティ vs ソリオ
内装のデザインは、後から登場したルーミー/タンク/トール/ジャスティが凝っている。
インパネは樹脂製だが、ステッチ風の処理を施してシボ(表面の模様)も革風だから、触らないと合成皮革を使っているように見える。ATレバーが収まるインパネの中央付近も、ルーミー4姉妹車は見栄えが良い。
視認性や操作性は同等だ。ATレバーとエアコンのスイッチをインパネの中央に並べた配置も良く似ている。
ルーミー4姉妹車では、ドライバーが背筋を伸ばして運転席に座った時、チルトステアリングの角度が足りずハンドルが十分に上を向かない印象だが、さほど不満はない。
勝者:ルーミー・トール4姉妹車
居住性比較/ルーミー・タンク・トール・ジャスティ vs ソリオ
前席の居住性はほぼ同じ。シートの座り心地も同等と考えて良い。
コンパクトカーとしては背もたれが比較的高く、座面のサイズや柔軟性を含めて両車ともに不満はない。
明らかに異なるのは後席だ。ルーミー4姉妹車は床と座面の間隔が不足気味で、座面の角度は水平に近い。そのために足を前方に投げ出す座り方になる。またソリオに比べると座面の柔軟性が乏しく、平板な印象だ。シートの骨格を共通化したタントと同様の座り心地になる。
ソリオは逆に腰が少し落ち込むが、ルーミー4姉妹車に比べるとボリューム感があって快適だ。両車ともに頭上と足元の空間は広いが、座り心地はソリオが快適だ。
勝者:ソリオ
荷室比較/ルーミー・タンク・トール・ジャスティ vs ソリオ
荷室の広さは両車ともに同程度だが、後席の畳み方が異なる。
ルーミー4姉妹車は、タントやスズキスペーシアと同様の畳み方で、後席の背もたれを前に倒し、さらに床面へ落とし込む。ソリオはワゴンRと同様で、後席の背もたれを前に倒すと座面も連動して下降し、フラットで広い荷室になる。
ソリオは手軽に使えるが、荷室の高さはルーミーに余裕がある。リアゲートの開口下端部分の地上高も、ルーミーが537mm、ソリオは665mm。重い荷物を積む時など、ルーミー4姉妹車の地上高が約130mm低いから使い勝手が良い。
荷室開口部の高さもルーミーはソリオを120mm上まわる1080mmだ。ソリオには後席を簡単に畳める手軽さはあるものの、大きな荷物を積む時の使い勝手はルーミー4姉妹車が優れている。
勝者:ルーミー・トール4姉妹車

動力性能比較/ルーミー・タンク・トール・ジャスティ vs ソリオ
ルーミー4姉妹車が搭載するエンジンは直列3気筒の1リッター。ノーマルエンジンとターボを用意する。
ソリオは直列4気筒の1.2リッターで、ノーマルタイプ/マイルドハイブリッド/フルハイブリッドの3種類を設定した。車両重量はルーミー4姉妹車のノーマルエンジンが1070~1080kg、ターボが1100kgだ。
ソリオは売れ筋のマイルドハイブリッドが950kg、フルハイブリッドでも990kgだから1トン以下に収まる。
ルーミー4姉妹車のノーマルエンジンは、軽自動車のダイハツタントやホンダN-BOXから代替えするならさほど不満を感じないが、コンパクトカーとしては幅広い回転域で動力性能が不足する。
ソリオと比べても排気量が200cc下まわって車両重量は100kg前後は重いから、ルーミーが見劣りする。
一方、ルーミー4姉妹車のターボは動力性能が1.5リッター並みに増強され、加速性能にも余裕を感じる。特に3500回転付近から加速が活発化するが、2400回転以下では相対的に駆動力が下がる。しかも2000回転付近では大きなノイズが発生して、全般的にルーミー4姉妹車のエンジンは不満が多い。
その点でソリオは平凡ながら使いやすい。フルハイブリッドではエンジン回転が下がった時にはモーターの支援が効果的に働き、運転がしやすく感じる。
勝者:ソリオ
走行安定性比較/ルーミー・タンク・トール・ジャスティ vs ソリオ
両車ともに全幅が狭めで天井が高く、高重心になるからカーブを曲がる時はボディが大きめに傾く。走行安定性は高くない。
その上で比べるとソリオが勝る。操舵に対する反応が鈍く後輪の接地性も十分とはいえないが、運転中にさほど不自然には感じない。2015年に発売された現行ソリオでは、プラットフォームが刷新されてボディも軽くなったためだ。
一方、ルーミー4姉妹車のプラットフォームは、2004年に発売された初代ブーン&パッソと基本は同じで、もともと想定していた車両重量は900kg前後になる。そこに補強を加えたとはいえ約200kg重いボディを組み合わせたから、当然に無理が生じた。
安定性を保つために後輪の接地性は下げられないから、14インチタイヤのノーマルエンジン車は、峠道では前輪側のグリップが下がって旋回軌跡をソリオよりも拡大させやすい。
ボディが捩れる印象も受ける。カーブを曲がる時は、ソリオよりもボディが大きく傾く。これに比べるとルーミー4姉妹車のターボは、足まわりの設定が少し硬く、車両の向きを少し変えやすい。ターボには15インチタイヤ装着車も用意されて違和感を抑えたが、それでもソリオの方が運転感覚が優れている。
勝者:ソリオ
乗り心地比較/ルーミー・タンク・トール・ジャスティ vs ソリオ
ルーミー4姉妹車の足まわりは、ノーマルエンジンとターボで設定が異なる。
ノーマルエンジン車の足まわりは、ゆったりした乗り心地をねらって少し柔らかいが、路上の細かなデコボコを微振動として伝えやすい。14インチタイヤの指定空気圧は、転がり抵抗を抑えて燃費を向上させるために前後輪とも260kPaと高く、足まわりのコスト低減の影響もあって粗く感じる。
ターボの15インチタイヤ装着車は少し硬めだが、タイヤの指定空気圧が250kPaと若干低く、細かな粗さは伝えにくい。好みによって選択の変わる範囲だが、15インチタイヤを履いたターボの引き締まり感を好むユーザーもいるだろう。
ソリオも硬めの乗り心地だが、粗い印象は抑えた。
勝者:ソリオ
安全&快適装備比較/ルーミー・タンク・トール・ジャスティ vs ソリオ
ルーミー4姉妹車が用意する安全装備ではスマートアシスト2が注目される。センサーには赤外線レーザーと単眼カメラを使い、時速50kmを上限に緊急自動ブレーキを作動できる。危険が生じた時の警報は時速100kmでも作動する。
また歩行者については緊急自動ブレーキは作動しないが、時速50kmを上限に警報を行う。価格は6万4800円だ。
ちなみにルーミー4姉妹車の開発と製造を行うダイハツのタントは、ほぼ同じ時期に改良を行ってスマートアシスト3を採用した。
価格を高めずにセンサーを2個のカメラに変更。時速50km以下では歩行者に対しても緊急自動ブレーキが作動して、車両に対する上限速度は時速80kmに高めた。魅力的な安全装備だが、開発タイミングの関係でルーミー4姉妹車には間に合わなかった。
一方、ソリオは2個のカメラを使う緊急自動ブレーキを幅広いグレードに採用。歩行者を検知して、高い速度域でも緊急自動ブレーキが作動する。装着車の価格アップは5万9400円だから少し割安だ。
勝者:ソリオ
燃費性能とエコカー減税比較/ルーミー・タンク・トール・ジャスティ vs ソリオ
2WDで見るとルーミー4姉妹車のJC08モード燃費はノーマルエンジンが24.6km/L、ターボが21.8km/Lとなる。
ソリオはマイルドハイブリッドが27.8km/L、フルハイブリッドは32km/Lだ。ソリオではマイルドハイブリッドでも、トール4姉妹車のノーマルエンジンに比べて燃費が優れ、なおかつ動力性能も上まわる。
エコカー減税は、ルーミーがノーマルエンジン、ターボともに平成32年度燃費基準を達成して、自動車取得税が60%、同重量税が50%軽減される。ソリオはマイルドハイブリッドが平成32年度燃費基準プラス10%を達成して85%・75%の減税。フルハイブリッドは同燃費基準プラス20%を達成して免税だ。
勝者:ソリオ
グレード構成と価格の割安感比較/ルーミー・タンク・トール・ジャスティ vs ソリオ
実用装備を充実させた標準ボディの買い得グレード同士で比べると、スマートアシストIIを標準装着したルーミーG・Sが168万4800円。ソリオマイルドハイブリッドMXデュアルカメラブレーキサポート装着車が175万5000円だ。ソリオは約7万円高いが、サイドエアバッグが標準装着される。
一方、ルーミーにはスーパーUVカットガラス、両側スライドドアの電動機能(ソリオハイブリッドMXは左側のみ)などが備わり、収納設備も豊富だ。装備と価格のバランスだけを見ればルーミー4姉妹車が割安になる。
また約12万円の価格アップでターボが装着され、なおかつリア側のスタビライザーが加わることもルーミー4姉妹車のメリットだ。
勝者:ルーミー・トール4姉妹車
総合評価 どっちが買い!?/ルーミー・タンク・トール・ジャスティ vs ソリオ
ルーミーは収納設備と荷室の機能が優れ、快適装備を豊富に装着した上で価格を少し安く抑えた。しかし動力性能はソリオが明らかに優れ、走行安定性と乗り心地も上まわる。安全装備もソリオが先進的だ。
使い勝手ではルーミー4姉妹車も工夫を凝らしたが、基本的な走行性能ではソリオに負けており、不満も感じられる。ルーミー4姉妹車を購入する時も、一応はソリオを試乗して、運転感覚を確認すると良いだろう。
勝者:ソリオ











































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