
小型&普通車の中で販売台数が最も多い車種はトヨタ「アクア」。最近の月別台数を見ると、ホンダ「フィット」が首位になることもあるが、2014年6月、および1~6月の累計では、アクアが小型&普通車の販売ナンバーワンだ。
そこで、2014年7月に約7年ぶりにフルモデルチェンジした新型(4代目)マツダ「デミオ」とアクアを比べてみたい。
マツダ 新型(4代目)デミオ vs トヨタ アクア -ボディサイズ対決-
まずはボディサイズだが、全長は新型になってデミオが160mm伸びて4060mmになり、アクアと比べても55mm上まわる。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も新型デミオが20mm長い。全幅は1695mmで等しく、全高は新型デミオが55mm高い。
このように全幅を除くと新型デミオの数値が上まわるが、大きな差ではない。両車とも全高が1550mmには達しないから、立体駐車場を利用しやすい。
最小回転半径は新型デミオの15インチタイヤ装着車が4.7m、16インチは4.9mだ。アクアは14/15インチタイヤは4.8mだが、16インチをオプション装着すると一気に5.7mまで拡大する。アクアの16インチタイヤ装着車は小回り性能が悪いので注意したい。
マツダ 新型(4代目)デミオ vs トヨタ アクア -インテリア対決-
内装の質感は見た人の印象に左右されるが、一般的にいえば新型デミオが上質と受け取られるだろう。1.3リッターエンジンを積んだベーシックなグレードを含めて、マツダ「アクセラ」に近い仕上がりだ。アクアはインパネのシボ(模様)に幾何学的なデザインを採用するなど個性的だが、上質感となるといま一歩だ。
メーターは新型デミオが大径で見やすいが、アクアは薄型のデジタルタイプを高い奥まった位置に備える。なので視線の移動量は少ない。エアコンなどスイッチの操作性は、両車とも互角だ。
前席は、新型デミオの座り心地が快適だ。シートの骨格はアクセラと共通化され、体が適度に沈んだところでしっかりと支える。座面と背もたれにボリューム感を持たせ、路面からの振動も上手に吸収する。肩まわりのサポート性も良い。
身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座った同乗者の膝先空間は、新型デミオが握りコブシ1つ分。アクアは握りコブシ1つ半だ。頭上の余裕は両車とも握りコブシの半分程度。1つ分には達しない。
後席の着座位置は両車とも低めで腰が落ち込みやすく、特にアクアは全高が新型デミオよりも55mm低く、この傾向が強い。アクアの後席は下側に駆動用電池が収まることもあって、体が沈む量も少ない。座った瞬間には底突き感も伴う。ただし座面の長さには余裕があり、前側を少し持ち上げたから、大腿部が座面から離れることはない。
対する新型デミオは、スペース的には窮屈でも、座面と背もたれには相応の柔軟性を持たせた。なので膝先空間はアクアが少し広いが、快適性では新型デミオが勝る。それでも新型デミオは、背もたれをもう少し寝かせると良いだろう。日本車は概して頭上の空間を確保するために寝かせているが、新型デミオは比較的立っている。
乗降性は両車とも互角だ。全高が高い分だけ新型デミオが有利に思えるが、前席側のピラーが寝ているので頭を下げて乗り降りする。後席側は足元が狭めでドアの開口部も上側が垂れ下がるから、窮屈な姿勢を強いられる。両車ともに乗り降りのしやすいクルマではない。
荷室の容量は両車とも大差はない。新型デミオは全高が55mm高いが、天井を後ろに向けて下降させたから、荷物の積載に適したボディ形状ではない。アクアは開口部の高さがさらに不足して、荷室の天井も下がる。積載性を重視するユーザーは、荷室の使い勝手に注意したい。
収納設備もほぼ互角。数を競えばアクアが勝るが、フタの付いたボックスは少ない。新型デミオはデザインを優先させている。

マツダ 新型(4代目)デミオ vs トヨタ アクア -価格対決-
新型デミオは1.3リッターのノーマルガソリンエンジンと1.5リッターのクリーンディーゼルターボが用意されている。アクアは1.5リッターのハイブリッドのみだ。そしてアクアで売れ筋のSは、価格が「186万1715円」になる。
新型デミオの価格は、当記事を執筆している2014年7月18日時点では未定なのだが、1.3リッターモデルは買い得グレードを「135~145万円」に設定してくるだろう。この価格帯を超えてしまうと、販売面で不利になるからだ。逆に、装備が相応に充実した買い得グレードを120万円台に抑えるのは難しい。
となれば、新型デミオをアクアと比べるなら“ディーゼル”だ。アクア Sが約「186万円」、フィットハイブリッドFパッケージが約「177万円」だから、新型デミオのディーゼルも、15インチタイヤを履いた買い得グレードの価格は同等か、少し安い「169万円」くらいだろう。
ちなみにマツダの2.2リッターのディーゼルエンジン搭載車は、2.5リッターのガソリン車よりも装備差を補正して40万円くらい高いが、ツインターボを装着する。新型デミオのディーゼルはシングルターボだ。1.3リッターの価格を戦略的に安く抑えるとはいえ、ディーゼルも30万円くらいの価格上昇になりそう。となれば169万円という価格もアリ得る。
アクアは、エンジンとモーターの駆動力を合計したシステム最高出力は100馬力。車両重量が1080kgと軽く、コンパクトカーでは軽快に走るが、新型デミオの太い駆動力には見劣りする。ただし、アクアはガソリンエンジンだから高回転域の吹け上がりは自然な印象。ユーザーによっては、新型デミオのディーゼルより、アクアのハイブリッドの方が馴染みやすく感じることはあるだろう。
エンジンノイズは、ディーゼルとあって新型デミオが少し大きい。ただしアクアもモーター駆動のみの状態で発進し、その後にエンジンが始動すると、ノイズが気になる時がある。発売当初に比べると静かになったが、違和感を完全には払拭できていない。ノイズについては互角だ。
となればディーゼルの特性をどのように考えるかで評価が変わるものの、動力性能を客観的にとらえれば、新型デミオが勝るだろう。
マツダ 新型(4代目)デミオ vs トヨタ アクア -燃費対決-
燃費性能は新型デミオのディーゼルが未定だから比較できないが、マツダの開発者は「JC08モード燃費で30km/L程度は達成したい」と言う。仮にこの数値であれば、走行に要するコストはどうなるか。
アクアのJC08モード燃費は37km/Lだ。実用燃費をJC08モードの85%、レギュラーガソリンの価格を1リッター当たり170円、軽油を150円とすれば、新型デミオのディーゼルは1km当たりの燃料代が5.9円になる。アクアは5.4円だから、1万kmを走って5万9000円と5万4000円の違いだ。
軽油の単価が安いため、新型デミオのディーゼルの燃料代もかなり下がる。
マツダ 新型(4代目)デミオ vs トヨタ アクア -走行安定性対決-
走行安定性は、新型デミオがプラットフォームと足まわりを一新させて走行安定性を高めた。
アクアは低重心でボディが50kgほど軽く、ダイレクト感を伴ったスポーティな運転感覚が持ち味だ。なので両車とも互角に近いが、車両の向きを滑らかに変えられるのは新型デミオ。コーナリングの最中に路上のデコボコを乗り越えた時なども、新型デミオの方が進路を乱しにくい。
こういった新型デミオの動きは、ボディやサスペンションの取り付け剛性などを高めたことでもたらされたから、乗り心地にも良い影響を与えた。低速域では硬めだが、粗さを抑えてコンパクトカーとしては快適だ。
新型デミオの試乗車はプロトタイプ(試作車)で、試乗したのもクローズドコース。加えて価格も未定だから比較する上では不備が多い。それでも長距離移動まで含めた走行安定性と乗り心地では、新型デミオのディーゼルが勝るだろう。
アクアは低重心による軽快な走りが特徴だから、市街地や曲がりくねった峠道に適する。
居住性は前述のように前席の広さは同等だが、座り心地と質感で新型デミオが勝る。後席も僅差で新型デミオだが、頭上や足元が狭めで、両車ともファミリーカーとして使うなら注意が必要だ。
マツダ 新型(4代目)デミオ vs トヨタ アクア -総評-
仮に価格が同等であれば、新型デミオのディーゼルはかなり魅力的。販売の好調なアクアにとって、強敵になり得ると思う。
アクアはトヨタ全店の約4900店舗が扱い、新型デミオのマツダディーラーは旧オートザム店を含めて1100店舗くらい。販売規模に4倍以上の開きがあるから、新型デミオの売れ行きがアクアを超えることはないが、商品力は勝るとも劣らない。
新型デミオの安全装備は未定ながら、赤外線レーザーを使った時速30km以下で作動する衝突回避の支援機能はほぼ必ず設定される。アクセラやアテンザと同様、ミリ波レーダーを使って幅広い速度域までカバーし、側方や後方の車両も検知する上級タイプも設けて欲しい。今のところアクアには衝突回避の支援機能が用意されず、新型デミオの優位点になるだろう。
アクアを含めて、従来のコンパクトカーの魅力は「低燃費と低価格」に集約されていた。走りや質感を重視するユーザーには、物足りないところがあった。この流れが新型デミオの登場で変わるかも知れない。
ライバル車にも良い影響を与え、小さなクルマの世界がさらに楽しくなりそうだ。

























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