
先代には及ばずとも、目下の販売は“絶好調”といえる新型プリウス
読者諸兄もご存じの通り、2015年12月に発売された「トヨタ プリウス」の売れ行きが絶好調だ。発売後1ヶ月の受注台数は10万台に達した。先代型の18万台に比べると少ないが、それでも大人気車と呼べる実績だろう。
直近の納期をディーラーに尋ねると、駆動用電池にニッケル水素を使う「S」と「Sツーリングセレクション」は1ヶ月半から2ヶ月程度まで縮まってきた。しかし、リチウムイオン電池を搭載する「A」以上のグレードは6ヶ月と長い。本革シートを装着した「Aプレミアム」は、さらに1ヶ月伸びて7ヶ月前後だという。2種類の駆動用電池を設けた背景には、この納期対策もあったのだろう。
先代型は全グレードがニッケル水素で、電池の供給が追い付かず納期が最長で10ヶ月まで遅延した。現行型は、この対策を講じたとも受け取られる。ディーラーも「納車を急ぐお客様には、Sグレードを推奨している」と言う。
となれば、プリウスはフル生産の状態で(この影響により同じ堤工場が生産するプレミオ&アリオンの納期が遅延気味の傾向も見られる)、目下のところプリウスは国内の最多販売車種だ。
先代プリウスも好調に売れたから、代替え需要が多い。これに新規顧客も加わって、しばらくは国内の最多販売車種であり続けるだろう。
アクアの販売台数もかなり根強い
そこで気になるのが、同じくトヨタで人気のハイブリッドカー「アクア」の動向だ。
アクアはプリウスよりも小さな5ナンバーサイズのハイブリッド専用車で、現行プリウスが登場するまでは1ヶ月に1万2,000台から1万8,000台前後を登録し、国内販売のナンバーワンであった。
アクアの発売は2011年12月。この後、2012年9月までは先代プリウスが国内販売の1位でアクアは2位だったが、2012年10月に順位が逆転。2013~2014年に「ホンダ フィット」が1位になった時期もあるが、おおむね一貫してアクアの首位が続いていた。
プリウスとアクアではサイズは違うものの、トヨタ全店で買える5ドアハッチバックのハイブリッド専用車という点は共通している。「需要の喰い合い」も生じるだろう。
そこでアクアの売れ行きを見ると、2015年12月は前年の92%、2016年1月は64%だ。1月は大きく落ち込んだが、それでも小型&普通車の2位に入り、フィットの1.7倍くらい売れた。アクアの人気も相当に根強い。

日本の道路事情にピッタリな5ナンバーサイズのアクア
アクアの高い人気の背景には、5ナンバーサイズに収まるコンパクトなサイズがあるだろう。
全長は3,995mm、全幅は1,695mmだから、プリウスに比べると545mm短く、65mm狭い。日本の道路環境にピッタリだ。
最小回転半径は、16インチタイヤ装着車になると5.4~5.7mに拡大するから注意が必要だが、14・15インチは4.8mに収まる。プリウスは15インチタイヤ装着車が5.1m、17インチは5.4mだから、アクアはボディが小さくて小回りの利きも良い。
ボディ形状は、アクアもプリウスと同様にボンネットがほとんど見えず、サイドウィンドウの下端を後ろに向けて大きく持ち上げたから、斜め後方の視界も悪い。
ボディ形状に基づく欠点はプリウスと同様だが、アクアは小さい分だけ運転がしやすく心理的な負担も軽い。
「一度はハイブリッドカーに乗ってみたい」という需要は未だ存在
ディーラーのセールスマンは「ハイブリッド車に一度は乗ってみたいと考えている人が今でも多く、アクアの人気に結び付いている」と言う。
ちなみに、来年2017年は「プリウス生誕20周年」。今のトヨタは数多くのハイブリッド車をラインナップしている。ホンダも品ぞろえを充実させており「今さら、ハイブリッド車に乗ってみたいのだろうか」という考えが一瞬、脳裏をよぎったのだが、どうもユーザー事情は異なる。
最近は代替えの周期が7~9年と長くなり、3~4回目の車検を受ける手前で売却する。となれば、仮に9年間乗って2016年に新車を買う場合、前の愛車を購入したのは2007年だ。
この時点でプリウスは先々代の2代目で、取り扱いディーラーはトヨタ店とトヨペット店であった。トヨタカローラ店とネッツトヨタ店ではまだ売っていない。
当然アクアも発売しておらず、フィットも先代型にハイブリッドを用意したのが2010年だから2007年では選択肢に入らない。シビックハイブリッドはあったものの、当時のハイブリッドはまだ馴染みの薄い先進技術で、購入の対象にしないユーザーも多かった。
だから今になって「ハイブリッド車に一度は乗ってみたい」と考えて愛車を選ぶケースが増えても不思議はない。
そして「初めて買うハイブリッド車」としては、5ナンバー車が安心できる。今では国内で売られる新車の約40%は軽自動車で、残りの約60%が小型&普通車だ。
販売ランキングを見ると、上位10車種の中で3ナンバー車はプリウス程度しかない。ほかはアクア、トヨタ シエンタ、日産 ノート、ホンダ フィット、マツダ デミオとなる。
このような市場構成だから、プリウスが発売された今でも5ナンバー車のアクアを選ぶユーザーが多い。プリウスを購入するつもりでディーラーに出かけ、試乗をしたり見積書を検討して、最終的にアクアを買うこともあるだろう。

新型プリウスの需要が落ち着けば、アクアが販売No.1に返り咲く可能性も
また、アクアは営業車などに使う法人ユーザーのニーズも高い。そして法人が営業車を購入する時は「車両価格が200万円以下の5ナンバー車」といった条件の付くことが多い。となればプリウスは対象外になりやすい。
特に新型プリウスで価格が最も安い「E」グレードの価格は242万9,018円で、先代プリウスで最も安かった「L」に比べて約20万円の値上げになった。
現行型のプリウスEはバイビーム式LEDヘッドランプを標準装着しており、リチウムイオン電池の搭載と相まってJC08モード燃費は「40.8km/L」。世界的に見ても最高峰の燃費性能だ(先代のLグレードは「32.6km/L」)。
なので実質的な価格上昇はリチウムイオン電池を含めて8~10万円だが、法人の購入では上級のメカニズムや装備はあまり考慮されない。現行型の価格が値上げされると分かった時点で、先代プリウスの「E」グレードを駆け込みで買う法人も見られた。
そのような背景もあって、今では多少なりとも安さを重視するなら「アクア」という選択肢になる。
このほかアクアは、5ナンバー車とあってレンタカー、カーシェアリングなどの需要が多く、プリウスとは直接競争しにくい面がある。少なくとも国内市場に合っているのはアクアだから、新型プリウスの需要が落ち着けば、アクアが再び国内販売のナンバーワンに返り咲く可能性が高い。
商品力と価格バランスを考えると、新型プリウスが買い得
ただし、機能や装備と価格のバランスを比べればアクアが必ずしも優位とはいえない。アクアの価格はプリウスよりも安いが、機能や装備も削られるからだ。
プリウスの「S」グレードとアクアの「S」グレードの価格を比べると、プリウス「S」グレードが59万2,036円高い。しかし、アクア「S」グレードにはプリウス「S」グレードに標準装着されるサイド&カーテンエアバッグ、バイビームLEDヘッドランプ、スマートエントリー、4.2インチTFTメーターなどがオプション設定になる。
これらを価格に換算すると、プリウス「S」グレードの装備はアクア「S」グレードを34万円分ほど上まわる。となれば約59万円もの価格差は、実際には装備の違いだけで約25万円に縮まる。
25万円でボディが拡大されて、室内も広がる。エンジンはアクアは1.5リッターだが、プリウスでは1.8リッターに拡大。しかもJC08モード燃費は、アクアSが37km/L、プリウスSは37.2km/Lと、ボディとエンジン排気量を拡大しながら気になる燃費値はほぼ同じだ。
さらにプリウスは現行型でプラットフォームを刷新。アクアのリヤサスペンションはトーションビームの車軸式だが、プリウスはダブルウイッシュボーンの独立式で、走行安定性と乗り心地のバランスもプリウスが上まわっている。
こういった商品力の向上と25万円の実質価格差を天秤にかければ、客観的にはプリウスが買い得だろう。
もちろんアクア「S」グレードにもメリットはあり、車両重量はプリウス「S」グレードに比べて280kg軽い。運転感覚が機敏で、峠道などを走るとアクアの方が運転が楽しく感じる。
それでも走りなどに特化させず、一般的な評価をすればプリウスが機能をバランス良く高めて買い得だ。特にアクアは後席と荷室が狭めで、実用的に5ドアクーペ的なクルマとなっている。4名で乗る機会があるユーザーにはプリウスを推奨したい。

トヨタ、そして各社のさらなる商品力向上に期待!
トヨタは2016年3月2日に、社内カンパニー制を導入すると発表した。
コンパクトカー/ミッドサイズビークル/CV(コマーシャルビークル/商用車)/レクサスインターナショナルといった7つのカンパニーを設け、責任や権限を各プレジデントに集約させるものだ。商品を主体に仕事を進めていく。
こうなると各ジャンルの顧客に、さらに密着したクルマ造りが行えるだろう。コンパクトカーとしてのアクア、ミッドサイズのプリウスが、独自性を強めて商品力を一層向上させる。
この考え方はBMWなどに近い。トヨタは社内カンパニーを設けたことで、各ジャンルが能動的に活動すると面白いクルマができそうだ。そもそもトヨタは1リッターエンジンが中心のパッソから、V型12気筒の5リッターを積むセンチュリー、オフロードSUVのランドクルーザー、さらに商用車まで多種多様のクルマをそろえる。























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