
今は小さなクルマに代替えするユーザーが増えて、小型&普通車では1~1.5リッターエンジンを搭載するコンパクトカーの人気が高い。一方、ファミリーユーザーを中心としてミニバンの需要が根強いのも事実。
となればコンパクトなミニバンが相応に用意されそうだが、実際には少ない。特に近年は「ホンダ フリード」の1人勝ちとなっている。「トヨタ シエンタ」は2003年の登場で設計が古く、「日産 NV200バネット」と「三菱 デリカD:3」は商用車ベースになるからだ。
だが2015年7月9日、シエンタが2代目へとフルモデルチェンジされた。
1.5リッターエンジンを搭載するコンパクトミニバンという位置付けは同じだが、全長が135mm、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は50mm拡大され、ひとまわり大きくなった。そしてノーマルエンジンに加えて、新たにハイブリッドも設定されている。
新型シエンタに対抗するライバル車は、前述のホンダ フリード。登場したのは2008年で、エンジンは1.5リッターのノーマルタイプとハイブリッドが用意されている。今回はシエンタとフリード、この2車種のコンパクトミニバンを比較したい。
新型シエンタ vs フリード/エクステリア比較
まずはボディサイズから見てみよう。
両車とも5ナンバーサイズに収まり、後部のドアは両車ともスライド式になる。この共通点を踏まえた上でボディサイズを比べると、全長は新型シエンタが4,235mm、フリードは20mm短い4,215mmだ。全幅は1,695mmで共通。全高は2WDで見るとシエンタが1675mm、フリードは40mm高い1,715mm。そしてホイールベースはシエンタが2,750mm、フリードは10mm短い2,740mmになる。
シエンタは現行型になってボディを拡大したために、フリードとほぼ同じ大きさとなった。それでも全高の数値は比較的異なり、新型シエンタはフリードに比べて40mm低い。
1,700mmを下まわることもあり、スライドドアを備えるものの新型シエンタは見栄えがワゴンに近い。逆にフリードは背の高さが強調されてミニバンの典型的なスタイルになる。
新型シエンタは外観も新鮮。フロントグリルの開口部が大きく、切れ長のヘッドランプから下側へ、ブラックのガーニッシュを装着した。このヒゲのようなガーニッシュは好みが分かれるところでもあるが、シルバーやブルーといった色彩のガーニッシュセットもディーラーオプション(10万4,760円)で用意されている。
対するフリードは一般的なミニバンスタイル。多くのユーザーにとって馴染みやすい形状に仕上げた。

新型シエンタ vs フリード/居住性比較
居住性で注目される技術は、新型シエンタが採用している「薄型燃料タンク」だ。先代(初代)シエンタも同様の設計で、床は低く抑えられていた。新型シエンタでは、スライドドア部分の床面地上高を330mmに設定。この数値はフリードよりも60mm低い。そのために乗降性は新型シエンタが優れている。
1列目シートの居住性は両車ともに互角だ。2列目は、両車ともにベンチタイプとセパレートを設定。セパレートシートは形状が異なり、シエンタは2分割されるものの中央が通路になる空間はない。
その代わりに左右独立式のアームレストと、座面の脇に収納設備を装着した。フリードの2列目セパレートシートは一般的な形状。左右席の中央が通路になり、両側にアームレストを装着してリラックスできる。
そして3列目は新型シエンタが薄型燃料タンクの採用で、膝の持ち上がらない着座姿勢が得られる。2列目に比べると3列目の快適性は下がるが、座面も相応に柔軟で全高が1,700mmを下まわるミニバンの3列目ではトップ水準。シエンタはボディの小さなワゴン風のミニバンだが、3列目は“意外”と感じるほどに快適だ。
対するフリードは、床と座面の間隔が不足して3列目シートに座ると膝が少し持ち上がる。大人6名の乗車自体はフリードも快適なのだが、新型シエンタと比べると僅かに負けてしまう。
ちなみにこの居住性対決は、とても皮肉なものだ。まずは2001年に登場した「ホンダ モビリオ」がフィットのプラットフォームを使ってコンパクトなミニバンを造った。フィットと同様に燃料タンクを前席の下に搭載したから、3列目の床が低く座面との間隔に十分な余裕がある。全長が4m少々と短いために膝先空間は狭かったが、小さくても空間効率の優れた快適なミニバンであった。
トヨタはこのモビリオを見て闘志を燃やした。特許の絡みで前席の下に燃料タンクを設置することはできないから、薄型燃料タンクを開発して先代(初代)シエンタに搭載。モビリオに近い渾身の低床設計に仕上げた。
となればモビリオの後継となる現行フリードも低床設計と思ったら、前席下側の燃料タンクをボディの後部に設置して常識的な設計にした。「前席から後席への移動性が悪い」というのがその理由だが、空間効率は明らかに下がった。
この勝負が今も続き、3列目の居住性は新型シエンタに差を付けられている。
新型シエンタ vs フリード/荷室比較
新型シエンタは、3列目を前方に押し込むように畳める。2列目を跳ね上げないと格納操作ができないのが欠点だが(先代型は3列目が小さい代わりに片手で前席の下に格納できた)、2WDの荷室床面は地上高が505mmと低く、重い荷物も積みやすい。
さらに2列目もベンチ/セパレートシートともに前方へ折り畳むことが可能。ボックス状の荷室になって自転車なども積みやすい。
対するフリードは、荷室の床面地上高がシエンタよりも低い480mm。3列目のシートは左右に跳ね上げる方式で操作が少し面倒だが、荷室容量は大きい。
注意したいのは、フリードの場合、2列目がベンチシートであれば前方に畳み込めるが、主力のセパレートでは単純に前に寄せるにとどまること。なので3列目のシートだけを畳んだ時と、2列目がベンチシートの荷室はフリードが使いやすい。2列目をセパレートとした時の機能で選ぶなら新型シエンタだ。
結論としては、荷室のフリード、居住性の新型シエンタと考えたい。

新型シエンタ vs フリード/エンジン性能・燃費比較
・ノーマルエンジン
先に触れたとおり、両車ともにエンジンは1.5リッターのノーマルタイプとハイブリッド。ノーマルエンジンを搭載した2WDの場合、新型シエンタは最高出力が「109PS(6,000rpm)」、最大トルクが「13.9kg-m(4,400rpm)」。フリードは「118PS(6,600rpm)/14.7kg-m(4,800rpm)」だ。
車両重量は2列目がセパレートの6人乗りで見ると、両車ともに1,320kgで等しい。なので、数値上で見る限りは少し高回転指向になるもののフリードに余裕が生じる。ノーマルエンジンのJC08モード燃費は、シエンタが「20.2km/L」で、フリードは売れ筋のGジャストセレクションが「16km/L」にとどまる。これは設計の新旧が明確なところで、フリードのエンジンは設計が古くアイドリングストップも付かない。なので、新型シエンタに差を付けられている。
・ハイブリッド
ハイブリッドはどうか。エンジンとモーター駆動を合計したシステム最高出力は、シエンタが100PS、フリードは99PSになる。それでもモーターの駆動力はシエンタが強く、発進時などのハイブリッドらしさも濃厚だ。ハイブリッドのJC08モード燃費はシエンタが「27.2km/L」、フリードが「21.6km/L」。
燃費でも、設計の新しいシエンタが優位になる。
新型シエンタ vs フリード/安全&快適装備比較
安全装備は、やはり設計の新しいシエンタが有利となった。
赤外線レーザーと単眼カメラを使った「トヨタセーフティセンスC」をオプションで用意しており(5万4000円)、万一の時には緊急自動ブレーキも作動させられる。
トヨタは作動速度の上限を時速80kmと公表しているが、開発者によれば「時速80kmは自動ブレーキが作動する限界速度。衝突の危険が迫った時の警報は、時速140kmまで作動するように設計されている。これはカローラアクシオ&フィールダー、ヴィッツなども同じ」と言う。
つまり衝突の回避を支援する機能警報は、高速道路を時速100kmで走っていても作動する。たとえ緊急自動ブレーキの作動が時速80km以下でも安心感は高い。
対するフリードは設計が古く、衝突の回避を支援する「あんしんパッケージ」「ホンダセンシング」は採用されていない。
快適装備は左側スライドドアの電動機能などが用意され、装備レベルは同程度だ。
新型シエンタ vs フリード/グレード構成・価格の割安度比較
シエンタのグレード構成は、ノーマルエンジン、ハイブリッドともにXと上級のGがある。
フリードのノーマルエンジン搭載車は、G、Gジャストセレクション、Gエアロ。これにハイブリッドと同ジャストセレクションが加わり、ハイブリッドにはエアロパーツが漏れなく装着される。新型シエンタにエアロ仕様はない。
そして買い得なシエンタG(198万327円)にLEDランプパッケージ(10万5,840円)を加えると、総額では208万6,167円。フリードGジャストセレクション(198万円)に右側スライドドアの電動機能(5万4,000円)を加えると総額で203万4,000円。このあたりが装備を同等にした両車の比較になる。
ハイブリッドの場合は、シエンタハイブリッドG(232万9855円)にLEDランプパッケージを加えると243万5695円。フリードハイブリッドジャストセレクション(236万円)は、価格は高めだがエアロパーツを含めて装備を充実させた。
装備内容を同等にすると新型シエンタの価格が少し高いが、大きな差は付かない。
新型シエンタ vs フリード/総合評価
総合的に評価すれば、新型シエンタが買い得だ。
新型シエンタは薄型燃料タンクによって優れた空間効率を備えていた先代型をベースに開発され、新型はヴィッツ&カローラ系のプラットフォームを使いながら機能をさらに洗練させた。特に燃費性能と衝突回避の支援機能は、今の技術トレンドとあって設計の新しい車種ほど有利になる。
対するフリードは登場してから7年が経過しており、機能的に古さが目立つ。しかし2016年に登場する次期型では、一気に挽回する可能性も高いだろう。
また床の低い荷室など、積載性を重視するならフリードを選ぶ余地もある。客観的には設計の新しいシエンタを推奨するが、ディーラーでフリードと比較してから結論を出したい。































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