
今は背の高い軽自動車が人気だが、機能的なバランスを考えると全高が1,600~1,700mmのタイプも見逃せない。ドアは横開き式だが開口部は十分に確保され、乗降性も良い。車内は広く、後席を含めて居住性は快適だ。コンパクトに畳む機能も備わり、荷室の容量は全高が1,700mmを超える車種には劣るが、子供用の自転車なら積むことも出来る。
価格はスライドドアの付いたタイプに比べて10~15万円は安く、車両重量も60~100kgほど軽い。JC08モード燃費も10%前後(3km/Lくらい)は向上する。だからファミリーでも使える軽自動車が欲しいと思ったら、まずは全高が1,600~1,700mmの車種を検討するのも良いだろう
ダイハツ ムーヴカスタム vs スズキ ワゴンRスティングレー/エクステリア対決
両車のボディサイズを比べると、軽自動車だから全長は3,395mm、全幅は1,475mmと等しい。軽自動車の規格枠ギリギリの数値だ。
全高はムーヴカスタムが1,630mm、ワゴンRスティングレーは1,660mmでワゴンRが30mmほど高い。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は、ムーヴカスタムが2,455mm、ワゴンRスティングレーは2,425mmでワゴンRスティングレーが30mm短くなる。寸法については同等と考えて良いだろう。
フロントマスクのデザインは見た人によって印象が異なるが、ムーヴカスタムはLEDヘッドランプを装着し、この周囲を囲むようにLEDクリアランスランプを装着した。ムーヴカスタムRS/Xのハイパーになると、グリルとバンパーの下側にもLEDのイルミネーションが追加される。
一方、ワゴンRスティングレーのフロントマスクはディスチャージヘッドランプが備わり、中央には半透明のガーニッシュを装着。この部分にLEDを内蔵して光らせている。両車ともイルミネーションを充実させた。
デザインに関する機能では、視界の違いが挙げられる。ムーヴカスタムのサイドウィンドウの下端は、ワゴンRスティングレーに比べて20mmほど高い。そのために囲まれ感が生じる半面、小柄なドライバーはクルマに潜り込んだ感覚になりやすい。ムーヴカスタムもLサイズセダンなどに比べれば視界は格段に優れ、ボディが小さいから運転もしやすいが、ワゴンRスティングレーに比べると取りまわし性は少し見劣りする。

ダイハツ ムーヴカスタム vs スズキ ワゴンRスティングレー/インテリア対決
内装では、インパネのレイアウトが両車とも良く似ている。ATレバーは中央部の下側に装着され、その左にエアコンのスイッチを配置した。メーターは両車とも自発光式で見やすい。質感も満足できるが、この2車種を比べるとムーヴカスタムの方が上質で華やかな印象だ。
前席の座り心地は両車とも快適。座面は奥行寸法に余裕を持たせ、軽自動車では座り心地をしなやかに仕上げた。背もたれはムーヴが現行型になって高さを50mm拡大。肩まわりのサポート性を向上させた。ワゴンRは腰を包む形状で快適に座れる。
後席は背の高い軽自動車とあって、頭上と足元の空間が広い。ただし着座姿勢は異なり、ムーヴは床と座面の間隔が少し不足する。そのために足を前に投げ出す姿勢になりやすい。
前後席に座る乗員のヒップポイント間隔は、ムーヴカスタムが1,030mm、ワゴンRスティングレーは1,000mmだが、着座位置の違いによって実際に後席に座ると印象が変わる。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は、ムーヴカスタムが握りコブシ3つ弱、ワゴンRスティングレーは3つ少々だ。数値上はムーヴカスタムが広いが、床と座面の間隔が少ないために若干狭まる。それでもLサイズセダンと同等以上の広さがあり、ゆったりと座れる。
後席で注意すべきは、むしろ座り心地だろう。ムーヴカスタムは座面の柔軟性が乏しく、体の支え方が物足りない。前述の足を前に投げ出す着座姿勢と相まって、座り心地はいまひとつだ。ワゴンRスティングレーの後席も、前席に比べると快適性は劣るが、ムーヴカスタムよりは柔軟だ。
後席には両車ともスライド機能と格納機能が備わり、荷物の積載に配慮した。ムーヴの先代型は後席のスライドが左右一体型だったが、現行型では左右に分割されている。半面、後席の背もたれを前へ倒した時に、座面も連動して下がる機能は省かれた。だから広げた荷室の床に段差ができる。
ワゴンRスティングレーは以前から後席のスライドは左右分割式。背もたれを倒すと座面も連動して下がり、フラットな空間に変更できた。なので後席は、座り心地、シートアレンジともにワゴンRスティングレーの機能が勝る。
収納設備は両車とも豊富だ。助手席の前側にはアッパーボックスとグローブボックスが上下に並ぶ。ワゴンRスティングレーは助手席の下に容量の大きなボックスを設け車外への持ち出しも可能にしたが、ムーヴカスタムでも不満はない。

ダイハツ ムーヴカスタム vs スズキ ワゴンRスティングレー/ドライビング対決
次は、運転感覚について述べたい。エンジンは両車ともノーマルタイプとターボを設定。この内、ノーマルタイプはワゴンRが勝る。車両重量が800kgと軽く、実用回転域の駆動力も高めたからだ。
最大トルクの数値は「6.4kg-m」(4,000rpm)。排気量に対してボディが重いために動力性能が十分とはいえないが、ノーマルエンジンを搭載した背の高い軽自動車としては余裕を感じる。
ムーヴのノーマルエンジンは、燃費向上のために実用回転域の駆動力が少し弱い。最大トルクは「6.1kg-m」(5,200rpm)になる。エンジン回転が4,900rpm付近まで上昇すると加速力が活発化するが、もう少し実用域の余裕が欲しい。ノーマルエンジンのノイズは通常の走行では同等だが、登坂路ではムーヴが静かに感じる。
ワゴンRは少し粗い印象だ。その代わりアイドリングストップ後の再始動音は、ワゴンRが圧倒的に静かだ。スティングレーXと標準ボディのFZは、Sエネチャージを搭載。アイドリングストップ後の再始動は、モーター機能付き発電機のISGが担当する。ISGはベルトを使ってエンジンを回すため、セルモーターのギヤが噛み合う金属音を発しない。
そのために静粛性が向上した。ISGは減速時の発電、さらにエンジン駆動の支援(ハイブリッド機能)も受け持つから、燃費も向上できた。JC08モード燃費はムーヴカスタムXも「31km/L」と優れているが、ワゴンRスティングレーXは「32.4km/L」に達する。
次はターボを比べたい。ターボは両車とも1リッターのノーマルエンジンに匹敵する動力性能を得ており、登坂路を含めて力不足を感じない。高速道路を使った長距離ドライブでも疲労を感じにくい。
最大トルクは、ムーヴ カスタムRSが「9.4kg-m」(3,200rpm)、ワゴンR スティングレーTが「9.7kg-m」(3,000rpm)だから、ノーマルエンジンの150%以上に達する。
その一方で、JC08モード燃費はムーヴ カスタムRSが「27.4km/L」、ワゴンR スティングレーTが「27km/L」だから、ノーマルエンジンの85%前後に収まる。動力性能が150%以上に高まる割に、燃費の悪化率は小さい。
ダイハツ ムーヴカスタム vs スズキ ワゴンRスティングレー/走行安定性対決
走行安定性は両車とも背の高い軽自動車では優れた部類に入る。ワゴンRの場合、標準ボディにはボディの傾き方を制御するスタビライザーが装着されないが、スティングレーは前輪に備えた。挙動の変化が穏やかに進み、走行安定性も満足できる。
ムーヴカスタムでは、スタビライザーを前輪側に加えて後輪側にも装着(2WD)。ボディ剛性を高めてサスペンションを入念に設定したこともあり、走行安定性はワゴンRスティングレーよりも優れている。直進安定性も同様で、コーナリングの最中にデコボコを乗り越えるような場面でも進路を乱されにくい。軽自動車の限られた全幅で、走行安定性を上手に高めた。
乗り心地は両車とも少し硬いが、ノーマルエンジンと組み合わせた14インチタイヤ装着車は、粗さを抑えて快適だ。特にワゴンRスティングレーXは、前述のようにアイドリングストップからの再始動も静かに行われ、快適性を高めた。
装備は安全面に注目したい。両車とも赤外線レーザーを使った時速30km以下で作動する衝突回避の支援機能を標準装着する。
ムーヴは後方にも音波センサーを設置。時速10km以下で後退している時、あるいは停止中に、後方に障害物があるのにアクセルペダルを深く踏み込むと、エンジン出力を絞る制御を採用した。
これらの安全装備を装着したSA(スマートアシスト)のグレードであれば、サイド&カーテンエアバッグを6万4800円でオプション装着することも可能だ。ワゴンRはサイド&カーテンエアバッグを装着できない。
ダイハツ ムーヴカスタム vs スズキ ワゴンRスティングレー/総評
以上の比較を振り返ると、内装の質はムーヴカスタムが高く、後席の座り心地とシートアレンジはワゴンRスティングレー。ノーマルエンジンの動力性能と燃費もワゴンRスティングレーが優れ、走行安定性はムーヴカスタムが勝る。安全装備もムーヴカスタムだ。
価格はノーマルエンジンを積んだムーヴカスタムX・SAが145万8000円、ワゴンRスティングレーXが146万1240円という具合に拮抗している。
基本的な選び方をいえば、内外装の質感、走行安定性など、セダン的な価値を重視するならムーヴカスタムになる。後席の居住性や荷室の使い勝手など、ミニバン的な実用性を大切に考えるなら、ワゴンRスティングレーを選ぶと良いだろう。
ただし前述のように視界や安全装備、動力性能にも差がある。両車の試乗車を実際に使ってから判断したい。
機能は一長一短だが、指向性が異なるので、ニーズに応じた選び方が可能だ。試乗すると今日の軽自動車の進化に驚かれると思う。

























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