【比較】トヨタ 新型ハイエース vs 日産 NV350キャラバン どっちが買い!?徹底比較/渡辺陽一郎

【比較】トヨタ 新型ハイエース vs 日産 NV350キャラバン どっちが買い!?徹底比較/渡辺陽一郎

人気の商用1BOX車対決!

(左)日産 NV350キャラバン/(右)トヨタ 新型ハイエース
試乗して感心させられるのは、なにも乗用車だけとは限らない。「商用車」にも優れた機能を持つクルマは多く存在する。
その代表とも言える商用車が「トヨタ ハイエース」と「日産 NV350キャラバン」の2車種だ。これらの商用車の使用条件は、乗用車に比べると格段に過酷である。荷物を積載し、街中から峠道、高速道路までさまざまなルートを走らなければならない。しかも使われ方によっては、走行距離が大幅に伸びる。
例えば1日に1回、80km離れた本社と営業所の間を往復すれば160km。1ヶ月に20日間稼働すると3,200kmだ。1年間には4万km近くを走破してしまう。となれば、求められる耐久性も乗用車とは異なるものとなる。
荷物も積むから、エンジン、トランスミッション、ボディ、サスペンションに至るまで、さまざまな部分を堅牢に造り込まねばならない。乗車時間が長くなれば、乗り心地やシートの座り心地がドライバーの健康状態にも影響を与える。シビアなクルマ造りが要求されるわけだ。
(左)日産 NV350キャラバン/(右)トヨタ 新型ハイエース
ハイエースとNV350キャラバンは、両車ともにワンボックススタイルの商用車。標準ボディ(名称はロングボディ)は、全長が4,695mm、全幅が1,695mmで、4ナンバー枠いっぱいのサイズになる。ハイエースはこれに4,840mm×1,880mmのロングワイド、5,380mm×1,880mmのスーパーロングワイドを加えた。
NV350キャラバンでは5,080×1,695mmのスーパーロング、5,230×1,880mmのスーパーロングワイドも選べる。このほかに4列シートのワゴン、5列シートのコミューター(キャラバンはマイクロバスと呼ぶ)も設けている。
エンジンのバリエーションは、ハイエースが2リッターと2.7リッターのガソリン、3リッターのディーゼルターボ。NV350キャラバンは2リッターと2.5リッターのガソリン、2.5リッターのディーゼルターボという組み合わせ。ボディとエンジンを豊富に設けた。
比較チェックで取り上げるグレードは、両車とも4ナンバーで登録される標準タイプのロングバン。グレードは装備の充実したハイエースの「スーパーGL」、NV350キャラバンは「プレミアムGX」とした。両車とも2列のシートを備え、乗車定員は5名になる。

ハイエース vs NV350キャラバン -インテリア対決-

トヨタ 新型ハイエーストヨタ 新型ハイエース日産 NV350キャラバン日産 NV350キャラバン
後席を畳んだ状態の最大荷室長(前席の背面から車内後端までの長さ)は、ハイエースが3,000mm。NV350キャラバンは3,050mm。荷室の最大幅は1,520mmで共通だ。ボディサイズが等しいワンボックスバンなので、荷室の広さも同等になる。
NV350キャラバンの荷室の特徴は、ラゲージユーティリティナットをロングボディの場合で14個装着したこと。これは荷室に設けた穴で、棚やネットを装着する時などに使う。ホンダ バモスホビオが採用して話題になった。
インパネのデザインは両車とも良く似ている。インパネの下側にATレバーが装着され、その左上にはカーナビやオーディオのユニット、下側にはエアコンが備わる。
異なるのはエアコンで、ハイエースのスーパーGLはオートタイプだが、NV350キャラバンはプレミアムGXでもマニュアルタイプ。このあたりの使い勝手と見栄えはハイエースが勝る。
トヨタ 新型ハイエース日産 NV350キャラバントヨタ 新型ハイエース日産 NV350キャラバン(左)日産 NV350キャラバン/(右)トヨタ 新型ハイエース
トヨタ 新型ハイエース日産 NV350キャラバン
運転席の座り心地は、両車とも同等と見て良い。乗降性を考えてシート両側の張り出しは小さめだが、座面の柔軟性に不満はない。背もたれの下側の支え方もちょうど良く、長距離移動にも対応できる。
後席は、足元にエンジンルームを収めたバルクヘッドがある。ボンネットの内部にエンジンを収めるクルマでは、乗員の足が前席の下に収まるが、ワンボックスのバンはそうならない。後席に座る乗員の膝先とバルクヘッドの間隔は、身長170cmの同乗者が座った状態で、両車ともに握りコブシ3つ分。前席の下に足が収まらないから膝が少し持ち上がって大腿部の支え方も甘いが、座面の造りは上級グレードとあって上質だ。荷室の広いワゴンとしても使いやすい。
そしてハイエーススーパーGLでは、前後席をリクライニングさせて連結し、フルフラットシートにアレンジできるというミニバン的な機能も用意されている。後席は両車ともに折り畳みが可能。畳んだ状態であれば荷室長が2mを軽く超えるため、大人2名が快適に就寝できるほどの空間が得られる。
【比較】トヨタ 新型ハイエース vs 日産 NV350キャラバン どっちが買い!?徹底比較/渡辺陽一郎

ハイエース vs NV350キャラバン -動力性能対決-

トヨタ 新型ハイエース日産 NV350キャラバン
動力性能は、2リッターエンジンについては両車とも互角だ。車両重量は1,800kg前後に達するので、荷物を積んでいない状態でも登坂路では少し力不足を感じる。
注目されるのは、NV350キャラバンのATが「5速」ということ。ハイエースの「4速」に比べエンジンの力を有効に活用しやすい。
一方、動力性能と燃費の両面で魅力的なのが「ディーゼルターボ」。ハイエースの3リッターは最高出力が144ps(3,400rpm)、最大トルクが30.6kg-m(1,200~3,200rpm)で、発進直後から高い駆動力が沸き上がる。
アテンザやCX-5のディーゼルターボは最大トルクが42.8kg-m(2,000rpm)に達するが、1,500rpmを下まわる領域では駆動力が低下する。だが、ハイエースはこの領域から力強く、ターボの特性をほとんど感じない。高回転域の吹け上がりは鈍いが、通常の走行ではガソリンエンジンの3リッタークラスに相当する加速感を味わえる。
いっぽう、NV350キャラバンのディーゼルターボは2.5リッターながら129ps(3,200rpm)/36.3kg-m(1,400~2,000rpm)を発生する。1,400rpm以下ではハイエースの方がトルクが若干高く、徐行している状態からの加速感はNV350キャラバンよりも滑らかだ。
その代わり、1,400rpmを超えるとNV350キャラバンのトルクが約6kg-m勝り、通常の走行では力強く感じる。それでも両車ともに十分な駆動力があるから運転がしやすい。軽くアクセルを踏んだだけでトルクが沸き上がる感覚は、商用車用に開発されたディーゼルターボの醍醐味だ。

ハイエース vs NV350キャラバン -走行安定性・乗り心地対決-

トヨタ 新型ハイエース日産 NV350キャラバン
走行安定性は、基本的には操舵に対する反応を鈍く抑えている。重心が高く、積載時にはボディが重くなるワンボックスバンを機敏に回頭させると、危険な状態に陥りやすいからだ。動きを鈍く抑えることで、後輪の接地性を含めて車両の動きを安定させている。
ただしハイエースのスーパーGLは、このワンボックスバンの特徴を踏まえた上で、ショックアブソーバーなどの足まわりを乗り心地を重視する設定に変更した。操舵に対する反応も、鈍めながら曖昧な感覚が払拭され、ワゴンのように運転できる。
そして乗り心地はかなり上質。タイヤサイズは15インチ(195/80R15)で、試乗車が履いていたブランドはブリヂストン・エコピアRD-613であった。指定空気圧は、荷物の積載を考慮して前輪が325kPa、後輪は300kPaときわめて高い。荷物を積んでいない状態ではタイヤが細かく跳ねて当然だが、ハイエースのスーパーGLは足まわりをゆったりと柔軟に伸縮させる。いわゆる「コシのある」乗り心地で、大きめの突起を乗り越えた時でもタイヤの動きがドタバタしにくい。
ハイエーススーパーGLは個人ユーザーがトランスポーターとして使ったり、絵画などの軽い荷物をオシャレな場所へ運ぶのに使われることが多い。商談の相手を同乗させる機会もあるだろう。そこで足まわりの設定も、少し乗り心地に振っている。
なので両車の走行安定性と乗り心地のバランスを比較すれば、ハイエースのスーパーGLが勝る。

ハイエース vs NV350キャラバン -装備・価格対決-

トヨタ 新型ハイエース日産 NV350キャラバン
装備は充実しており、ハイエーススーパーGLは自発光式のオプティトロンメーターなどを標準装着。オプションでは、LEDヘッドランプ、アルミホイール、スマートエントリー&スタート、両側スライドドアの電動機能、バックモニターを内蔵したルームミラーなどを装着できる。
ハイエーススーパーGLのディーゼルターボ仕様は、車両価格が338万914円。前述の快適装備をフルに装着すると約30万円の上乗せで、総額では370万円近い金額だが、ワゴン並みの快適性と便利性が得られる。
NV350キャラバンプレミアムGXは、ディーゼルターボの価格が330万9120円。プレミアムGXにはインテリジェントキーなどが標準装着され、キセノンヘッドランプやアルミホイールはオプションだ(合計すると約20万円)。スライドドアの電動開閉機能はワゴンのみの設定で、バンには装着できない。
注意したいのは安全装備。4輪ABSは標準装着されるが、横滑り防止装置は設定がない。エアバッグは運転席側には標準装着されるが、助手席側はオプションになる。後席のシートベルトは、中央席が2点式だ。しかもハイエースの場合、後席のシートベルトが標準装着されるのはスーパーGLのみで、DXはオプション設定。注文しないと、後席にシートベルトを備えていない車両が納車される。
トヨタ 新型ハイエース日産 NV350キャラバン
乗用車で先進的な安全装備を積極的にアピールしながら、商用車に基本的なシートベルトすら装着されないのでは、ユーザーに対する「安全差別」になってしまう。スマートエントリー&スタートなどはオプションでも構わないが、シートベルトは万一の時に乗員の生命を左右する。ユーザーが希望するか否かにかかわらず、「必ず着用してください」という態度で接するのがクルマ造りのプロであるメーカーのあり方だ。
ちなみに乗用車では、2014年10月からすべての生産車に横滑り防止装置が装着される。これも自発的に装着するのではなく、義務化によるものだから悲しいが、10月以降も商用車に備わらないとすれば、乗用車との「安全差別」がさらに拡大する。これは自動車メーカーが「人の生命をどのように考えているか」という重大な課題なので、積極的に取り組んで欲しい。
ハイエースも、NV350キャラバンも、荷物の積載性、使い勝手、ディーゼルターボの走行性能などはとても優秀だ。ただし総合的に「優秀なクルマ」と評価するには、安全装備の充実が不可欠になる。

コメント