
「インフィニティ」vs「レクサス」
ハイブリッドカーとして登場し、話題となった「日産 新型スカイライン」。
新型スカイラインハイブリッドには、これまで付けられていた「NISSAN」エンブレムは採用されず、海外で展開している日産の上級車ブランド「INFINITI」エンブレムが付けられて登場した。
新型スカイラインハイブリッドは、海外では「インフィニティQ50」として販売されているため、“インフィニティ”の日本国内におけるブランド力を高めるためのようだが、スカイラインが日産の看板車種としての位置付けを放棄したようにも受け取られる。違和感が拭えない。
背景にあるのは、日本における「セダンビジネスの難しさ」だろう。1989年に3ナンバー車の税制不利が解消されると、各メーカーともにセダンを大型化して海外モデルと統合させた。単に3ナンバー車にするだけでなく、クルマ造りまで海外を向いたからセダンの需要が冷え込んだ。
なので、セダンの衰退は自業自得だが需要の回復に苦労している。インフィニティのエンブレムは、暗中模索の結果でもあるだろう。日産もスカイラインをどう扱えば良いのか、悩んでいるのだと思う。
対するトヨタは、日産の「インフィニティ」に相当する「レクサス」ブランドを2003年より日本で展開している。レクサスのエンブレムを付けても筋が通っており、「スカイライン」にもかかわらず「INFINITI」のエンブレムが付いている、といった曖昧さはない。
だが、クルマ好きとしては生み出されたセダン達に「罪はない」と考えたい。狙っている市場は海外でも「渾身のクルマ造りが施された日本車」であることに変わりはないからだ。
日産 新型スカイラインハイブリッド vs レクサスIS -エクステリア対決-
まずは「日産 新型スカイラインハイブリッド」と「レクサス IS」の外観から比べてみよう。
ボディサイズを比べると、スカイラインハイブリッドがISに比べて「125mm」長く、「10mm」広く、「10mm」高い。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)もスカイラインハイブリッドが「50mm」上まわっている。
一見、スカイラインハイブリッドが大柄に感じるが、大きく異なるのは「全長」だ。
視界は最近のセダンに多いパターンで、スカイラインハイブリッド、ISのいづれもウィンドウの下端が高くクルマに潜り込んだ印象を受ける。両車ともに、特に後方視界(真後ろと斜め後ろも)が悪い。購入する前に、縦列駐車や車庫入れを試しておこう。
その上で優劣を付けると、全長の短いISが扱いやすい。小回り性能も、ISの最小回転半径は「5.2m」と小さいが、スカイラインハイブリッドは「5.6m」と大きく、ISが有利だ。
日産 新型スカイラインハイブリッド vs レクサスIS -インテリア対決-
内装の質感は、互角。ISはATレバーが収まるセンターコンソール付近が繁雑。スイッチの操作性は、スカイラインハイブリッドがインパネ中央の左端まで手を伸ばす必要が生じるものの、大差はない。
フロントシートの座り心地は、両車ともに満足できる。スカイラインハイブリッドはバックレストの形状を工夫して、背骨の曲がり方に沿ってサポートする。肩まわりの押さえ方も良好だ。ISも不満はなく、座り心地にボリューム感を持たせたが、体のホールド性はスカイラインハイブリッドが少し勝っている。
リアシートは両車とも天井が低めのセダンなので、座ると腰が落ち込む。この傾向は、ISが少し強めだ。
その代わり、頭上の空間は全高が10mm低いにも関わらずISのほうが若干余裕がある。座面とバックレストの造りは、フロントシートほど柔軟ではないが不満も感じない。大腿部のサポート性は、腰の落ち込み方が少ない分だけスカイラインハイブリッドが優れている。ISは少し浮いた感じだ。
リアシートに座った同乗者の膝先空間は、身長170cmの大人4名が乗車して、両車とも握りコブシ2つ少々。空間的には十分だが、腰が下がって足が前に伸びるから、リアシートは両車ともにゆったりした座り心地とはいい難い。フロントシートの下に足が収まりにくいのも共通の欠点だ。特にスカイラインハイブリッドは、全長とホイールベースが長いので、もう少し余裕が欲しいところだ。

日産 新型スカイラインハイブリッド vs レクサスIS -動力性能対決-
次に、動力性能を比べてみよう。
結論から述べると、動力性能はスカイラインハイブリッドの圧勝だ。これは、ハイブリッドシステムのベースとなるエンジンが異なる当然だろう。スカイラインハイブリッドは「3.5リッターV6」、ISは「2.5リッター直4」エンジンが搭載されている。ISでも通常の走行で不満はないが、スカイラインハイブリッドは低回転域から余裕ある動力性能を発揮する。
走行安定性と操舵感も、指向性がかなり異なる。スカイラインハイブリッドは、車両の向きを変える特性を重視した。旋回軌跡を拡大させにくく、舵角に合わせて確実に内側へと回り込んでいく。スカイラインハイブリッドのコーナリング性能は極めて高い。
半面、旋回中にアクセルを閉じたり、下りコーナーでハンドルを切り込みながら制動するような場面においては後輪の接地性が下がる。スカイラインハイブリッドはリアサスペンションの取り付け剛性が高く、挙動の変化が唐突ではないから不安は感じにくいものの、最近のクルマの大半は後輪の接地性を最優先させていることからも、スカイラインハイブリッドのグリップバランスは非常に珍しい。
これを開発者に尋ねてみると、「スポーツモードでは操舵感がクイックになるので、足まわりもあえて思い切りスポーティな回頭性を重視する設定とした。シャシー性能が高いためにバランスは取れると考え、確信犯的に味付けした」と言う。
開発者のコメント通り、スカイラインハイブリッドは操舵感もかなり「個性的」だ。
ハンドル操作を電気信号に変換してステアリングを操作する方式だから、セッティング次第でどうにでも味付けできる。特に「スポーツモード」は、従来のステアリングシステムでは実現不可能なほどにクイックで、一種の“玩具性”が伴う。操舵感も相当に重くなるが、反応の仕方は「神経質」といえるほど。これについても開発者は「違いを明確にする目的で、あえて極端にした面はある」と言う。
20年くらい前の電子制御式パワーステアリングもそうだったが、新しいメカニズムが開発された初期段階では「どこまでやれるのか」と追求することが多い。スカイラインハイブリッドは昔と違って走行安定性を担保しているものの、違和感が生じるところまで踏み込む、という傾向は変わっていないようだ。
この設定は良いとしても、低い速度域でゆっくりと操舵した時の手応えが筆者としては気になった。妙にウネウネとゴムを捩るような感覚があり、小さな舵角では操舵と車両の動きに微妙なズレが生じる。高い速度で峠道を走るような場面では、車両の向きが機敏に変わって良く曲がり“玩具的な面白さ”を満喫できるが、普通に走行する時の違和感は改善の余地を残している。
ブレーキも慣れるまでに少し時間がかかった。特に気になったのは「フル制動」の時だ。かなり奥までペダルが入り込む。通常は考えられないブレーキングなだけに、いざという時にはユーザーもかなり驚くかも知れない。
以上のように、スカイラインハイブリッドでは数々の違和感が散見され、特にメルセデス・ベンツやBMWのユーザーがスカイラインハイブリッドに代替えしようとすると「(操作感覚が)子供っぽい」と感じてしまうかもしれない。
しかし、見方を変えればステアリングの操作感をここまで個性的に、刺激的にセッティングした日本車は他に存在しない。好みは明らかに分かれるが、ツボにハマるユーザーが運転すれば、唯一無二の選択肢になることも考えられる。
スカイラインハイブリッドは、街乗りだけで済まさず、出来ればレンタカーを借りるなどで峠道を走ってほしい。ハンドル操作に機敏に反応し、グイグイと良く曲がるクルマが大好きな読者諸兄であれば、購入を決定することになるかも知れない。
一方、レクサスISはスカイラインハイブリッドのような突出した個性を備えていない。勿論、それが普通といえば普通なのだが・・。
ISは、後輪の接地性を高めたタイプだ。ただしグレードと装着タイヤによって指向性が変わる。「標準仕様」や「バージョンL」の場合、17インチタイヤは乗り心地に振っているが、後輪の接地性が少し緩い。
18インチは後輪のサイズが前輪よりも拡大され、後輪の踏ん張り感が大幅に増す。その代わり乗り心地が硬くなる。一般的に推奨できるのは「17インチ」だろう。
もっとも、18インチでも「Fスポーツ」なら足まわりの動きが上質になるが、車両価格も「553万3,715円」と跳ね上がり、割高感が強まる。
ちなみに、スカイラインハイブリッドの乗り心地は硬めではあるが粗さはなく、走行安定性を考えれば満足できる。

日産 新型スカイラインハイブリッド vs レクサスIS -燃費・装備対決-
燃費は、スカイラインハイブリッドの350GTハイブリッド タイプPが「17.8km/L」、IS300hが「23.2km/L」だ。排気量が小さい分、ISが勝る。
装備は、スカイラインハイブリッドの圧勝。衝突回避の支援機能を大幅に充実させている。ミリ波レーダー方式だが、衝突を回避できる設定速度の限界を時速60kmとしている。2台先を走る車両も検知して、早期に回避操作を開始することも可能だ。
さらに後側方車両検知の機能も備わり、気付かずにレーンチェンジを開始すると、自動的に元の車線に引き戻す制御も行う。フロントカメラを使って、走行レーンに沿って走るようにステアリングを制御する機能も備えた。
これらが、500万2,560円の350GTハイブリッドタイプPに標準装着され、カーナビもセットされているのだからお買い得である。
レクサスISも、ミリ波レーダーを使った衝突回避の支援機能と車間距離制御のクルーズコントロールを6万3,000円の低価格で設定するが、安全装備はスカイラインハイブリッドが勝っている。
日産 新型スカイラインハイブリッド vs レクサスIS -総合評価-
以上を総合的に判断すると、商品力はスカイラインハイブリッドが上まわる。スカイラインハイブリッドはボディが大柄な割にリアシートも広くないものの、動力性能と安全装備では圧勝だ。
スカイラインハイブリッドの問題はやはり「操舵感」だ。「IS」の方が自然で好感を持つユーザーも多いだろう。
その意味ではISを選ぶ価値も十分にあるが、「機能や装備と価格のバランス」で判断すればお買い得なのは断然スカイラインハイブリッドになる。
それにしても日産は、ずいぶんと面白いクルマを造ったと思う。
今後、メルセデス・ベンツ製の2リッター直4ターボを搭載するのも興味深い。スカイラインハイブリッドのような味付けは、メルセデス・ベンツは絶対にやらないと思うが、そこに基本設計が同一のエンジンが積まれる。
スカイラインハイブリッドもISも、海外向けの商品ではあるけれど日本で売るならもう少し販売に力を入れるべきだろう。特にスカイラインハイブリッドは中身を考えれば前述のように割安で、独特の面白さがある。
日産の礎を築いた、伝統の「スカイライン」なのだから。


























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