
注目の軽オープン2シーターの「S660」と「コペン」を徹底比較!
最近登場した新型車の中で、特に注目度の高い車種としては、ホンダ「S660」が挙げられる。軽自動車でありながら2シーターのクーペで、エンジンは座席の後部、つまりボディの中央に搭載するミッドシップだ。脱着式のソフトトップにより、開放的な運転感覚も味わえる。
S660のライバル車はダイハツ「コペン」。S660と同様に軽自動車のクーペで、電動開閉式のハードトップを装着するからオープンドライブを楽しめる。エンジンはボディの前側に搭載して前輪を駆動する一般的な方式で、ミッドシップのS660とは異なる。
S660の解説は2015年3月30日、コペンは2014年6月19日に掲載したので、そちらを参照していただきたい。今回はS660とコペンの比較チェックを行う。
ホンダ S660 vs ダイハツ コペン/エクステリア対決
まずはボディサイズだが、軽自動車だから両車とも全長は3395mm、全幅は1475mmで、規格枠ギリギリの数値になる。全高は異なり、S660は1180mm、コペンは100mm高い1280mmだ。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)はS660が2285mm、コペンは55mm短い2230mmとなった。全長が同じだから、S660はコペンに比べてボディの前後の張り出しを抑えている。
ちなみにS660が搭載するS07A型エンジンは、Nシリーズの搭載を前提に開発された。室内を広く確保すべく前後に短く、背が高い。なのでこのエンジンをクーペに搭載する場合、ボンネットの内部に収めることはできない。
その一方で、エンジンをボディの中央に搭載すれば、前後輪の重量バランスが良くなり(S660は前輪:45%・後輪:55%)、走行安定性や操舵感を向上できる。この2つの事情が相まって、S660ではミッドシップ方式が採用された
外観のデザインは、S660とコペンでは大きく異なる。S660は前述のように全高が低く、特にボンネットの位置を抑え込んだ。
対するコペンはエンジンをボディの前側に搭載し、ボンネットとエンジンの間には、歩行者との接触に備えて一定以上の空間を確保せねばならない。なのでボンネットを低く抑えるのは難しく、コペンの外観は丸みのある水平基調になった。S660は鋭角的だ。
スポーティー感覚が強く注目を集めるのは、明らかにS660だろう。フロントマスクは薄型で、後ろ姿はエンジンを収めるためにボリューム感がある。小さくてもミッドシップを象徴する造形だ。
その半面、S660は着座位置、天井ともに低いから、コペンに比べると乗降時の腰の移動量が大きい。クーペでは乗降性が無視されやすいが、今は中高年齢層のユーザー比率が高まった。軽自動車であれば、セカンドカーとして日常的な移動に使われることも多いから、購入時には乗り降りのしやすさも確認したい。
トップの開閉方法も違う。S660のソフトトップは、ロックを外して手で巻き取り、フロントフードの中に収める。装着時には逆の手順が必要だが、コペンのハードトップは前述のように電動開閉式。車内のロック操作は手動だが、スイッチで簡単に開閉できる。不意に雨が降り始めた時でも、降車する必要はない。

ホンダ S660 vs ダイハツ コペン/インテリア対決
内装の質感は両車ともに軽自動車としては高い水準にあるが、カッコイイと感じさせるのはS660だろう。インパネはドライバーを包み込むようにデザインされ、視覚的にも車両との一体感を得やすい。
メーターパネルは、S660では大径のタコメーターが装着され、速度はその内部にデジタルで示される。もっとも、このあたりは好みによっても左右される。
車内の雰囲気は、オープンにした状態であれば両車とも開放的だが、トップを閉じた状態では、S660が良くいえばタイト、悪くいえば窮屈に感じる。サイドウインドウの上下寸法も乏しく、右側のウインドウを全開にしても顔を出しにくい。
軽自動車だから両車とも取りまわし性に不満はないが、車庫入れや縦列駐車が行いやすいのはコペンだ。日常的な移動に使うとなれば、使い勝手で差が生じる。
加速力などの動力性能はS660が力強い。コペンも2500回転付近では過給効果が感じられ、3800回転前後から速度の上昇が活発になるが、S660では約1800回転で駆動力の立ち上がりを感じる。この後、2500回転前後から6000回転を超える領域の吹き上がりも機敏だ。コペンも排気系統などに手を加えたが、S660ではターボなどを専用に設計して、実用指向のNシリーズとは異なるスポーツカーのエンジンに仕上げた。
トランスミッションの操作感は両車とも良好で、特にS660は、6速MTながら確実に操作できて感覚的にも優れている。コペンはATレバーを含めて、取り付け位置が少し前寄りだ。
CVTの制御はS660に特徴がある。アクセルを少し踏み増した程度では、無段階の変速操作をあまり行わない。前述の高い駆動力を生かし、車速を高めようとする。燃費を含めた効率を重視するなら、少し変速させてエンジン回転を高めた方が良い場合もあるが、そうするとドライバーのアクセル操作/エンジン回転/車速の比例関係にズレが生じてしまう。運転の楽しさを重視して、CVTの変速をあえて抑えた。

ホンダ S660 vs ダイハツ コペン/走行安定性対決
走行安定性と操舵感も、S660は特別な印象だ。低重心のミッドシップスポーツカーとあって、コペンを含めたほかの軽自動車とは運転感覚が違う。カーブへの進入では、ハンドルを切り始めた時から車両が正確に向きを変え、速度を高めて曲がっても旋回軌跡を拡大しにくい。
S660のタイヤサイズは、前輪が15インチ(165/55R15)、後輪が16インチ(195/45R16)。ミッドシップでも走行安定性を十分に確保するため、後輪のグリップ性能を高めた。それでもなお、前輪が路面をつかむ力は強い。
そして危険を回避するような時も、サイズの太い後輪の効果もあって、ドライバーを慌てさせる状態に陥りにくい。もちろん横滑り防止装置も装着される(スイッチ操作によるカットはできない)。
このあたりは几帳面に造り込んだ。全幅の狭い軽自動車でもあるから、車両の動きに良い意味での緩さを持たせ、姿勢が少し不安定になったところで楽しませる設定かと思ったが、そうなってはいない。軽自動車で、しかもボディ剛性を確保しにくいオープンモデルなのに、クルマの動きは正確だ。ダイレクト感のある運転を満喫できる。
コペンも軽自動車では十分に安定しているが、S660に比べると全幅の狭さ、相対的な高重心を意識させる。電動開閉式のハードトップも、スポーティーな運転感覚に限れば重量と重心の面でマイナスだろう。
もっともコペンの場合、適度な挙動変化が操る感覚を高めたところもある。旋回中に故意にアクセルを戻し、車両の進行方向を内側に向けるといった前輪駆動車の操作もしやすい。走りの精度が高いのはS660だが、運転感覚には趣味性も問われるから、一概に良し悪しでは片付けられないと思う。
乗り心地は両車とも硬めだ。特にコペンでは、旋回中に突起を乗り越えた直後の突き上げ感が気になる。指定空気圧も異なり、S660は前輪が190kPa、後輪が200kPaだが、コペンは前後輪ともに240kPaと高い。
もっともその分だけJC08モード燃費はコペンが少し優れている。S660は6速MTが21.2km/L、CVTが24.2km/Lで、コペンは5速MTが22.2km/L・CVTが25.2km/Lになる。
両車ともアイドリングストップはCVTのみに装着され、MTには付かない。運転の楽しさと燃料のムダ使いを防ぐことは次元の違う話だから、MTにも装着すべきだ。
ノイズはS660がエンジンを座席の後部に搭載するため、けっこう勢い良く響く。これも魅力のひとつだと思うが音質は少し粗い。好みが分かれそうだ。

装備では、S660には赤外線レーザーを使った衝突回避の支援機能が用意される。コペンでは同様の装備を選択できず、早い時期に設定して欲しい。
安全面でも先進的なS660だが、ひとつ重大な注意点がある。納期が長いことだ。販売会社によれば、本稿を執筆している2015年4月中旬に契約しても、納車は2016年2月頃になるという。コペンの1.5か月程度に比べて大幅に長い。S660はセカンドカーの需要が多いから納期が長くてもユーザーの支障は少ないという見方もできるが、新年度の4月を過ぎると、契約時には予想できなかった転勤の辞令が下ることもある。
そしてメーカーでは「S660の生産規模は1日に40台、1か月に800台で、増産の予定はない」と言う。
コペンは日常的な移動に使いやすいスペシャルティクーペだが、S660は生粋のスポーツカーだ。いわばマニアックなクルマで、屋根の開閉が面倒だろうが、手荷物の収納に困ろうが、納期が1年に伸びようが、ユーザー諸氏は優しく接してくれるかも知れない。
しかしメーカーはそこに甘えてはいけない。ホンダは日本を代表する信頼性の高い自動車メーカーで、欲しいクルマを適切な納期でユーザーに届けることも、ホンダ車を選ぶ大切な理由になっている。早期に増産を可能にして、あの抜群に楽しい運転感覚を、できる限り多くの人達に味わっていただきたいと思う。
























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