ホンダ S660 vs マツダ ロードスター どっちが買い!?徹底比較/渡辺陽一郎

ホンダ S660 vs マツダ ロードスター どっちが買い!?徹底比較/渡辺陽一郎

話題性の高いオープンスポーツカー2台を徹底比較!

ホンダ S660マツダ ロードスター
今、話題の新型車といえばホンダ「S660」だろう。軽自動車のスポーツカーだが、運転すると全幅を1475mmに抑えたボディサイズの制約をほとんど感じない。「小さなスポーツカーを造ったら、たまたま軽自動車のサイズになった」とすら思わせる。開発段階では、軽自動車規格に収めるために数多くの苦労をしているが、無理した形跡をまったく感じさせないのが凄い。
となればマツダ「ロードスター」と比べたくなる。2015年4月17日に、軽スポーツ同士の比較として『ホンダS660vsダイハツコペン どっちが買い!?』を掲載したが、改めてS660を取り上げたい。
なお、この2車の詳細は、2015年3月30日に『S660の走行性能は軽史上「No.1」!ホンダ S660 詳細解説+試乗記』、3月20日に『その乗り味は「初代ロードスターの再来か」発売直前、新型ロードスター 詳細解説+試乗記』で述べている。これも併せて参照していただきたい。

ホンダ S660 vs マツダ ロードスター/エクステリア対決

ホンダ S660
まずはクルマの成り立ちだが、S660は軽自動車で、エンジンはボディの中央にミッドシップで搭載する。ロードスターは全長は短いもののワイドな3ナンバー車で、エンジンは前側に搭載して後輪を駆動する。両車ともオープンスポーツカーだが、サイズとレイアウトはかなり違う。
ボディサイズは、S660の全長が3395mmで全幅は1475mm。ロードスターは全長が3915mm、全幅は1735mmだ。ロードスターが520mm長く、260mm幅広い。ただしホイールベース(前輪と後輪の間隔)はS660が2285mm、ロードスターが2310mmだから、わずか25mmしか違わない。
全長の差が520mm、ホイールベースは25mmという数値の格差は、S660がミッドシップの軽自動車、ロードスターが後輪駆動の3ナンバー車という違いに基づく。S660は座席とエンジンを前後輪の間に収め、なおかつ軽自動車規格に当てはめるべくボディの前後を切り詰めたから、ホイールベースが全長の67%に達した(ロードスターは59%)。
マツダ ロードスター
一般的にいってクルマの造形は、全長に占めるホイールベースの比率が大きいほど、塊感が強まり引き締まって見える。そしてクルマのデザインは、現在に近づくほどロングホイールベースの方向に進化してきたから、S660は寸法的にも新鮮味が感じられる。
しかも全高はS660が1180mm、ロードスターは1235mmで55mmの差が付く。S660は外観をワイド&ローに見せて、軽自動車の腰高感を払拭させた。
一方、ロードスターの魅力としては、ボンネットの長いスポーツカーの典型的なカッコ良さがある。オーバーハング(ボディがホイールから前後に張り出した部分)はS660より長いが、従来型に比べると切り詰められ、伸びやかさと筋肉質の引き締まり感を併せ持つ。
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マツダ ロードスターマツダ ロードスターマツダ ロードスターマツダ ロードスターマツダ ロードスター

ホンダ S660 vs マツダ ロードスター どっちが買い!?徹底比較/渡辺陽一郎

ホンダ S660 vs マツダ ロードスター/インテリア対決

ホンダ S660
マツダ ロードスターマツダ ロードスター
内装のデザインはどうか。S660は目の前に大きなタコメーターがあり、速度は内部にデジタルで示される。エアコンのスイッチなどが収まるインパネの中央部分は緩やかな曲線を描き、ドライバーを包み込む雰囲気だ。
対するロードスターのインパネは、「CX-5」以降のスカイアクティブ技術を使ったマツダ車に共通する水平基調のデザイン。中央に大径のタコメーター、右側にスピードメーター、左側に水温計や燃料計が備わり、馴染みやすい3眼タイプになる。
インパネ中央の高い位置には7インチのWVGAディスプレイが備わり(「Sスペシャルパッケージ」と「Sレザーパッケージ」に標準装着)、ディーラーオプションのSDカードを挿入すればカーナビとしても機能する。
ホンダ S660マツダ ロードスター
基本デザインはほかのマツダ車に似ているが、後輪駆動車とあってシフトレバーが装着されたセンターコンソールは高い。着座位置はスポーツカーらしく低めだから、囲まれ感が強まった。
両車の内装を比べて気付くのは、質感にあまり違いがないこと。S660は軽自動車ながらインパネにソフトパッドを使うなど、上質に造り込んだ。Nシリーズなど今日の軽自動車の質感はコンパクトカーに勝るほど高いが、S660にも同様のことが当てはまる。シフトレバーの手前にある樹脂コンソールなどが、ロードスターに若干見劣りするが、S660の内装に魅力を感じる人も多いだろう。
そしてS660の6速MTのシフト感覚は、ストローク(前後左右に動く範囲)を抑えながら、気持ち良く決まる。ロードスターと比べても遜色はない。
シートの座り心地は、両車ともに着座位置の低いスポーツカーだから、体が座面に沈む感覚は乏しい。
それでもロードスターが少し柔軟だが、大きな差はない。左右方向のサポート性は両車ともに良好。座面の奥行寸法は、両車とも505mmで等しい。
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ホンダ S660 vs マツダ ロードスター/乗降性対決

ホンダ S660マツダ ロードスター
乗降性は、両車とも着座位置が低めだから、良好とはいい難い。ソフトトップを開いた状態では、あまり差はないが、閉じた時には55mmの全高の差が利いてくる。S660にスムーズに乗り込むには、まずシートにヒップを乗せ、その後に両足を滑り込ませるといった工夫が必要だ。
ソフトトップの開閉になると、S660はさらに面倒。はずす時にはソフトトップを巻き取り、フロントフード内部に収納する。装着する時は逆の手順だ。
対するロードスターは、手を後方に伸ばせば、運転席に座った状態で開閉できる。不意に雨が降ってきた時など、ロードスターは素早く閉められるので使い勝手が良い。
荷物の収納性もロードスターが勝る。ボディの最後部には狭いながらもトランクスペースが備わり、シートの背面にも、リアストレージボックスを左右に2つ設けた。対するS660は収納設備がほとんどなく、2名で乗車すると手荷物の収納にも困る。
ホンダ S660 vs マツダ ロードスター どっちが買い!?徹底比較/渡辺陽一郎

ホンダ S660 vs マツダ ロードスター/動力性能対決

ホンダ S660
次は動力性能を比べる。S660のエンジンは直列3気筒の660ccでターボを装着した。最高出力は64馬力(6000回転)、最大トルクは10.6kg-m(2600回転)。使用燃料はレギュラーガソリンだ。
最大トルクは軽自動車のターボの中でも高い部類に入る。しかも2600回転で発生するから、軽自動車のギヤ比では、走行中は常にターボが作動している。運転感覚は1リッタークラスのノーマルエンジンと同等だ。
車両重量は6速MTが830kg、CVT(無段変速AT)が850kg。決して軽くないが、動力性能の不足も感じない。高回転域の吹き上がりは軽快で、許容回転数はCVTが7000回転、6速MTは7700回転まで高めた。
マツダ ロードスター
一方、ロードスターのエンジンは、現行型になって排気量を先代型の2リッターから1.5リッターに縮小させた。使用燃料はプレミアムガソリンで、最高出力は131馬力(7000回転)、最大トルクは15.3kg-m(4800回転)になる。
巡航中にエンジンが2000回転を下まわると駆動力が落ち込むが、それ以上の回転域なら不満はない。4000回転を超えた領域の吹き上がりも活発で、良く回るエンジンに仕上げた。
車両重量は「Sスペシャルパッケージ」の6速MTが1010kg、6速ATが1050kgになる。先代型に比べると100kg以上も軽くなったから、動力性能は先代型の2リッターに見劣りするものの、スポーツカーとしての加速力は備わる。
S660との対比でいえば、加速感が勝るのはロードスター。ただし差が付くのは主に最高出力が発揮される高回転域で、実用域ではあまり違いがない。
またコンパクトなスポーツカーでは、パワーをフルに出し切る楽しさもある。そこまで考えれば、両車ともボディサイズと車両重量に見合う性能だろう。

ホンダ S660 vs マツダ ロードスター/走行安定性対決

ホンダ S660ホンダ S660
操舵感と走行安定性は、ミッドシップと後輪駆動というレイアウトの違いもあって優劣を付けにくい。S660が軽自動車で、全幅が1475mmしかないことも考えれば、かなり上質に造り込んだ。
S660は後輪の接地性を高めた設定ではあるが(タイヤサイズも前輪が15インチで後輪は16インチ)、前輪も路面をしっかりとつかんで確実に曲がる。操舵に対する反応は正確で、速度を高めて曲がっても旋回軌跡を拡大させにくい。旋回の後半でアクセルを踏み増すと、後輪に荷重が加わって車両を舵角に沿って確実に前へ押し出す。
俗っぽい表現をすれば「オン・ザ・レール」と呼ばれる運転感覚で、操舵角に対して忠実に旋回する。車両の動きに合わせてハンドルを微調節する必要がほとんどない。
だからVSA(横滑り防止装置)をカットするスイッチも設けていない。後輪を大きく横滑りさせるような性格のクルマではないわけだ。
マツダ ロードスターマツダ ロードスター
強いていえば、旋回中にアクセルを踏むというより少し戻して、車両の向きを若干コントロールする程度の走り方で十分に楽しめる。ボディの中央に重いエンジンを搭載するミッドシップの特徴を生かしたスポーツカーの新しい運転感覚ともいえるだろう。
ロードスターはS660とは対称的で、初代モデルに通じる後輪駆動の特徴を感じる。旋回時にボディの前側を下げて車両を内側へ向けるのは、設計の新しい大半のマツダ車に通じる設定だ。ロードスターはそこに後輪駆動車の優れた重量配分とコントロール性を加えた。後輪の接地性が味付けの範囲内で若干緩く、アクセル操作によって車両の向きを変えやすい。クルマと対話している感覚を味わえる。
この性格の違いに優劣はないが、S660が軽自動車だと考えればやはり凄い。
表現を変えると、全幅が狭いとか排気量が小さいといわれる今の軽自動車の規格も、それ相応に造り込めば、優れた商品力を生み出せる。Nシリーズに次ぐS660の投入で、ホンダの軽自動車造りの底力が見えたように思う。これは軽自動車という規格が持つ潜在的な可能性でもあるだろう。
ホンダ S660 vs マツダ ロードスター どっちが買い!?徹底比較/渡辺陽一郎

ホンダ S660 vs マツダ ロードスター/安全装備対決

ホンダ S660
安全装備は、S660には「シティブレーキアクティブシステム」を3万7800円でオプション設定した。赤外線レーザーを使った自動ブレーキ付の衝突回避支援機能で、時速30km以下で作動する。
ロードスターにこのタイプの安全装備は備わらないが、斜め後方を並走する車両を知らせる「ブラインドスポットモニタリング」、「カメラを使った車線逸脱警報の機能」は用意した。ロードスターには前方に向けた衝突回避の支援機能を充実させる余地がある。
買い得グレードの価格は、「S660β」が198万円(6速MT&CVT)、「ロードスターSスペシャルパッケージ」は270万円(6速MT)。機能と価格のバランスでは、軽自動車では高価格ながらS660の方が割安と判断できる。
マツダ ロードスター
ただしS660の納期は、早くも1年近くまで伸びてしまった。ロードスターも一時期は商談の予約をウェブサイトで募るなど、ユーザーに手間を強いる売り方をしていて良心的とはいい難い。それでも納期を2015年4月下旬時点で販売店に問い合わせたところ、7月下旬頃という。おおむね3か月だからS660に比べれば短い。
クルマに限らず、商品にとっては売り方も大切。販売方法や納期に不満が生じると、いくら優れた商品でも顧客の満足度を高められない。昨今は長い行列を有り難がる傾向も見られるが、決して優れた売り方ではない。

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