
新型スカイラインターボとアテンザ クリーンディーゼルを比較チェック!
日産「新型スカイライン」が、2014年2月の発売から4月までに「5,000台」を超える数を受注したという。
発表されたのは2013年11月だから、実際の受注期間は半年近くにも及ぶ。だが1世代前のスカイラインの販売台数は、セダン/クーペ/クロスオーバーの3車種を合計しても1ヶ月の受注数は200~300台であった。5,000台という数は日産 ノートならば僅か半月で達成できるが、スカイラインにとっては非常に高いハードルだ。
ちなみにスカイラインは、新型になってもTVCMや新聞広告などの宣伝をほとんど行っていない(今後は実施する模様だが)。しかも今の日本では売りにくいLサイズセダンということを考慮すると、5,000台という受注実績はスカイラインのネームバリューの高さを物語っている。
今でもファンが多く、なおかつ日産を育てたクルマでもあるから貴重な財産として大切に守って欲しい。セダンの流れを変えるくらいの気持ちでキャンペーンなどを取り組むべきだ。
その意味でも重要なのが、新たに登場した「新型スカイライン 200GT-t」だ。
今までは350GTハイブリッドとして3.5リッターV型6気筒のハイブリッドのみを設定してきたが、新たなラインナップとして2リッター直列4気筒のターボを加えたのだ。
グレード構成などの詳細は、2014年5月26日に掲載した「日産 新型スカイラインターボ 200GT-t 新型車解説」をご覧いただくとして、今回はライバル車を比較してみよう。
まず、スカイライン 200GT-tのベストグレードは「タイプP」だ。ベーシックな「200GT-t」は自動ブレーキを作動できる衝突回避の支援機能が装着されず、最上級の「タイプSP」は19インチタイヤが高額で(メーカーオプション価格も21万6,000円に達する)そのほかの装備も割高なので推奨できない。
グレードは3種類だから、必然的に中間モデルになる421万2,000円の「200GT-t タイプP」を選ぶ。この値付けは微妙で、ライバルに相当する車種を見つけにくい。
トヨタ車のセダンの価格帯でいえば、マークXの売れ筋よりは高く、クラウンに比べると安い。装備の違いを補正すると、マークXの3.5リッターV6エンジンを積んだグレードと同等だが、マークXで人気が高いのは圧倒的に2.5リッターである。
マークXの3.5リッターは(ツインインジェクター方式を採用するとはいえど)1リッターの排気量増加が約50万円に相当し割高なので、引き合いに出してもあまり意味がない。
そこで、「マツダ アテンザセダン クリーンディーゼル」と比べてみよう。
アテンザセダンの位置付け自体はマークXに近いのだが、人気グレードは2.2リッターのクリーンディーゼルターボを搭載する「XD・Lパッケージ」。
車両価格は358万2,000円(6速AT)で、「新型スカイラインターボ 200GT-t タイプP」に近いレベルで安全装備を充実させている。カーナビは新型スカイラインと違ってオプション設定なので、カーナビを加えた価格は388万円くらい。
それでも30万円以上の価格差があり、アテンザセダンXD・Lパッケージには19インチタイヤも標準装着される(アテンザセダンの19インチはXDや20Sのオプション価格が5万4000円と安い)。
従って機能と価格のバランスを比べると、アテンザセダンXD・Lパッケージの方が買い得と考えて良い。

新型スカイラインターボ vs マツダ アテンザ クリーンディーゼル -燃費対決-
燃費性能にも触れてみよう。
新型スカイラインターボ 200GT-t タイプPの使用燃料はハイオクで、JC08モード燃費は「13km/L」。アテンザ クリーンディーゼル XD・Lパッケージは軽油を使い、JC08モード燃費は「20km/L」(6速AT)だ。
実用燃費をJC08モード燃費の「85%」、プレミアムガソリンを1リッター当たり「175円」軽油を「145円」として1km走行当たりの燃料代を計算すると、新型スカイラインターボが「15.8円」、アテンザ クリーンディーゼルは「8.5円」だ。
1万kmであれば新型スカイラインターボが「15万8,000円」アテンザ クリーンディーゼルが「8万5,000円」となり、その差額は約「7万円」。
比率にすればアテンザ クリーンディーゼルの燃料代は新型スカイラインターボの54%程度だから、車両価格の違いも含めて出費はアテンザ クリーンディーゼルが大幅に安く抑えられる。
新型スカイラインターボ vs マツダ アテンザ クリーンディーゼル -エクステリア対決-
ボディサイズは、アテンザセダンが少し大きい。全長で70mm、全幅で20mm新型スカイラインターボを上まわる。全高は1,450mmと両車ともに同じ数値で、今日のセダンでは若干背が低い部類だ。
ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は、後輪駆動車とあって新型スカイラインターボが20mm長い。
アテンザもセダンのほうがワゴンに比べて80mm長いが、新型スカイラインターボはさらにロングホイールベースだ。
アテンザセダンがワゴンよりもホイールベースを伸ばしたのは、後席の足元空間を拡大して外観を引き締め、格好良く見せるためだ。特に中国市場では、背が低くボンネットの長いセダンスタイルが好まれる。そこでアテンザセダンも、前輪駆動車でありながらフロントウインドーの位置を後退させ、ボンネットを長く見せている。新型スカイラインターボは後輪駆動だから、ロングノーズのデザインに仕上げやすい。
新型スカイラインターボ vs マツダ アテンザ クリーンディーゼル -視界・最小回転半径対決-
視界は両車ともにあまり良くない。今日の流行に沿って、サイドウィンドウやインパネの位置を高めに設定したからだ。ドライバーがクルマに潜り込んだような印象になる。
アテンザセダンはサイドウィンドウの下端を後ろに向けて大きく持ち上げたから、斜め後方も見にくい。新型スカイラインターボもボディ後端のピラー(柱)が太めで、後方視界を損なっている。
最小回転半径は、新型スカイラインターボが5.7m、アテンザセダンが5.6mと大回りだ。特に新型スカイラインターボは、後輪駆動車の特徴となるステアリングの切れ角を生かせていない。
クラウンアスリートはホイールベースが新型スカイラインターボと同じ数値で5.2mに収まり、フーガはホイールベースが2,900mmと長く、20インチタイヤ装着車もあるが5.6mにとどめた。
新型スカイラインターボ vs マツダ アテンザ クリーンディーゼル -インテリア対決-
次に、内装をチェックしよう。
新型スカイラインターボのインパネには光沢のあるピアノブラックが使われ、艶っぽく仕上げられた。エアコンのスイッチは縦方向に配置。アテンザのインパネは水平基調のデザインでオーソドックスだが、手探りの操作はしやすい。
新型スカイラインターボは見栄えの良さ、アテンザセダンは実用性を重視している。
フロントシートは、両車ともサイズに余裕を持たせている。新型スカイラインターボの座面は体が少し沈んだ部分でしっかりと支えるタイプ。
バックレストの形状が乗員の背骨に合わせて湾曲しているので、背中から肩にかけてのサポート性も良い。
アテンザセダンは新型スカイラインターボに比べて座り心地は少し硬めだが、ボリュームに不足はない。腰まわりがしっかりと支えられているので、長距離ドライブも快適だ。
リアシートは、両車ともにボディが大柄な割にはあまり広くない。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先空間は、両車とも握りコブシ2つ半。フィットなどのコンパクトカーと同程度で、腰が少し落ち込んで膝が持ち上がる。
アテンザセダンは座面の前方を大きめに持ち上げて大腿部のサポート性を向上させたが、小柄な同乗者が座ると大腿部を押された感覚になりやすい。
頭上空間は、身長170cmの同乗者が座った状態で、新型スカイラインターボは掌が収まるくらい。アテンザは握りコブシ半分程度になる。
乗降性も両車ともいま一歩。フロントシートはさほど悪くないが、リア側は天井が後ろに向けて下降するため、ドアの開口部の上下寸法が不足気味だ。頭を下げて乗り込む。
足元空間があまり広くないから、乗降時の足の取りまわし性も良くはない。

新型スカイラインターボ vs マツダ アテンザ クリーンディーゼル -動力性能対決-
次に、最も違いが出やすいと思われる両車の動力性能について比べてみよう。
新型スカイラインターボ 200GT-tが搭載する2リッター直列4気筒ターボは、最高出力が211ps(5,500rpm)、最大トルクが35.7kgf-m(1,250~3,500rpm)。
最高出力の数値はノーマルタイプのガソリンエンジンでいえば2.5リッタークラスだが、最大トルクは3.5リッターに匹敵する。そのため、実用回転域での駆動力が高い。
3.5リッターV型6気筒をベースにしたハイブリッドは、モーター駆動が加わるものの、車両重量も100kgほど重いため、200GT-tでもあまり見劣りしない。半面、高回転域の伸びは350GTハイブリッドが勝る。
いずれにしろ、新型スカイラインターボ 200GT-tはパワフルと表現できる動力性能を得ているのは間違いない。ターボでありながらアクセル操作と動力性能の増減に違和感はなく、6,000rpm前後まで回さない限りは3.5リッタークラスの性能と考えて良いだろう。
アクセラセダンXD・Lパッケージが搭載する2.2リッターのクリーンディーゼルターボは、新型スカイラインターボとはフィーリングがまったく異なる。
最高出力は175ps(4,500rpm)、最大トルクは42.8kg-m(2,000rpm)。ガソリンエンジンでいえば4リッタークラスの最大トルクをわずか2,000rpmで発揮するから、発進直後の駆動力はきわめて高い。
通常の走行では、軽くアクセルペダルを踏むだけで1,500~2,500rpm付近を維持しながらシフトアップを重ねて速度を上昇させていく。この運転感覚は一種の快感ともいえるが、ガソリンエンジンに慣れたユーザーが扱うと違和感を抱くこともあるだろう。エンジン回転と動力性能の関係が、ガソリンエンジンとは異なるからだ。
ディーゼルの中では高回転まで回る部類だが、ガソリンエンジンに比べれば頭打ちは早い。それでも前述の燃料代の安さまで考えれば効率は高く、走行コストの面で見ればクラウンハイブリッドなどと同等だ。
新型スカイラインのターボやハイブリッドと比べても明らかに安い。エンジンノイズはディーゼルとあってアテンザセダンが大きいが、ディーゼルエンジンの中では静かなほうだ。
また、新型スカイラインターボも静かなエンジンではない。音質が太くスポーティと表現できるが、静かで滑らかに吹け上がる多気筒エンジンとは異なる。
纏めると、両車とも動力性能は十分で、新型スカイラインターボ 200GT-tの運転感覚は馴染みやすく、アテンザセダンXD・Lパッケージは低回転域の高い駆動力と高効率が魅力だ。
新型スカイラインターボ vs マツダ アテンザ クリーンディーゼル -走行安定性対決-
走行安定性と操舵感はどうか。
新型スカイラインは、350GTハイブリッドがハンドル操作を電気信号に変換して操舵する「ダイレクトアダプティブステアリング」を採用しているが、200GT-tターボは電動油圧式を採用している(2014年秋にダイレクトアダプティブステアリングがオプション設定される予定)。路面の状況に合わせて前輪の動きを微調節する機能などは付かないが、電動油圧式のほうが操舵感は自然だ。
ダイレクトアダプティブステアリングはスポーツモードの選択によってギヤ比を大幅にクイックにすることも可能だが、低速でゆっくりと操舵した時に操作と舵角にズレが生じたり反力が不自然だったりする。だが、電動油圧式であればこういった違和感は生じない。
そして200GT-tターボの足まわりは、350GTハイブリッドよりも少し硬めに設定されている。
車両重量も100kgほど軽く、走行安定性は向上。350GTハイブリッドは良く曲がる半面、相対的に後輪の接地性が低く感じる場面もあるが、200GT-tであれば違和感を生じにくい。前後輪のグリップバランスが一般的な比率に近付けられている。
だから、350GTハイブリッドのような機敏に向きを変える面白さや玩具性は乏しいが、自然な運転感覚を重視するユーザーには適している。
「ダイレクトアダプティブステアリング」は、今は発展途上のメカニズムと考えるべきだろう。
新型スカイラインターボ vs マツダ アテンザ クリーンディーゼル -総評-
以上を総括すると、機能と価格のバランス、動力性能と燃費を考えると買い得なのはアテンザセダンXD・Lパッケージだ。走行安定性も上手にまとめた。
一方、新型スカイラインターボは実用性を超えた運転の楽しさ、新しいスポーティセダンの姿を追求している。その結果、「ダイレクトアダプティブステアリング」のセッティングが少し行き過ぎたと受け取られるが、機敏に曲がる性格は往年のスカイラインのイメージに合うだろう。
ボディをもう少し小さく抑え、200GT-tは車両重量を1,450kg以下にすると車両の挙動バランスがさらに良くなったと思うが、「攻める気分」にさせる性格は濃厚である。
アテンザに比べると新型スカイラインは割高ではあるが、現存する国産セダンの中では運転の楽しさを最も強く押し出している。
この持ち味を突き詰めたのが「350GTハイブリッド」、少しバランス型に振ったのが「200GT-tターボ」という位置付けになる。一般的な選択はアテンザセダンだが、刺激が欲しいユーザーへは新型スカイラインターボを推奨したい。
BMWやメルセデス・ベンツのような「優等生」でないところも、過激だった時代のスカイラインを思い出させるのだ。


























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